•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

張本と美誠のアベックVで感じた「中国に勝てる」というイメージの大切さ

2018年6月14日16時0分  スポーツ報知
  • 「ジャパン・オープン荻村杯」シングルスでアベック優勝を果たした伊藤美誠(左)と張本智和

 卓球のワールドツアー「ジャパン・オープン荻村杯」のシングルスは男子は張本智和(14)=エリートアカデミー=、女子は伊藤美誠(17)=スターツ=が初優勝を飾り、10日に閉幕した。

 この大会で特に目を引いたのは、中国選手との戦いぶりだ。張本は準々決勝でリオ五輪金メダルの馬龍に勝ち、決勝ではロンドン五輪金メダルの張継科を下した。1大会で2人の五輪王者を破っての圧巻の優勝だった。伊藤は準決勝で世界10位の陳幸同、決勝で3位の王曼ユと2連勝。王は中国の次代のエースと期待される選手で、伊藤は過去6戦は全敗していた。

 2人とも、世界最強国の中国選手を相手に、気後れなくプレーしていたことも印象的だった。伊藤は決勝後に「思い切って楽しくできた。いつも通りの自分だった」と語っていた。4月のアジア杯でも世界1位の樊振東から白星を挙げている張本は「自分は比較的、中国選手(のボール)に合ってるなって感じがある」と苦手意識を持っていなかったと明かしていた。

 ここ最近、中国選手との「差」が間違いなく縮まってきていると感じている。直近のワールドツアー2大会で、日本選手は中国選手から計9勝を挙げている。

 ▽中国オープン

 張本4―0張継科

 芝田沙季4―3朱雨玲

 伊藤4―0武楊

 浜本由惟4―3孫穎莎

 ▽ジャパン・オープン荻村杯

 張本4―3張継科

 張本4―2馬龍

 張本4―0周雨

 伊藤4―2王曼ユ

 伊藤4―3陳幸同

 開催時期や参加選手も異なるため単純には比較できないが、昨年はこの2大会で計2勝(不戦勝を除く)だった。大きく伸ばしていることは事実だ。伊藤と張本がそのうちの7勝と際立っているが、芝田、浜本の相手もトップ選手だった。さらに前々週の香港オープンでは吉村真晴が張継科を4―3で下している。今大会で張継科とフルゲームを戦った上田仁、陳幸同に2―4で敗れた石川佳純の試合も、勝敗がどちらに転んでもおかしくない内容だった。

 中国は一度敗れても、その選手のプレースタイルを模したコピー選手を相手に練習を重ね、チーム全体で対策を練ってくる傾向がある。昨年4月のアジア選手権では平野美宇が打球点の高い攻撃的な卓球で丁寧、朱雨玲、陳夢に3連勝して優勝したが、1か月後の世界選手権に向けて、4人のコピー選手を用意して“包囲網”を敷いてきた。

 張本や伊藤もこれまで以上に警戒し、研究されることが予想される。今後も厳しい戦いが続いてくことは避けられないが、大会を見守ったある指導者は「いろんな選手が中国選手に勝つようになってきている。こうした流れが広がっていけば、中国も的を絞れず、対策が難しくなる」と、昨年までとは状況が変わりつつあると指摘していた。

 全体を通して見れば、現段階ではまだ圧倒的に分が悪いものの、張本や伊藤を筆頭に何人もの選手が中国勢からの勝利という成功体験を通じて、「勝てる」イメージを描けるようになってきている。こうした流れを絶やさないことが、必ずや「打倒・中国」につながっていくはずだ。(記者コラム・林 直史)

コラム
今日のスポーツ報知(東京版)
報知ブログ(最新更新分)一覧へ