世界の波を知るカリフォルニア生まれの日本代表・五十嵐カノア「海とおいしい食べ物、友達がいれば、それでいい」

2018年3月6日12時0分  スポーツ報知
  • サーフィンを教えてくれた父・勉さん(左)と握手する五十嵐
  • 2018年ワールド・チャンピオンシップツアー予定

 サーフィンは2020年東京五輪から新種目に採用される。日本人の両親を持ち、米カリフォルニア州で生まれた五十嵐カノア(20)=木下グループ=は、世界トッププロが集うワールド・チャンピオンシップツアー(WCT)に16年から参戦。日米両国籍を保有しているが、日本代表として戦う意思を固め、日本連盟から強化指定を受けた。世界トップクラスの実力者がインタビューに応じ、幼少期から海外転戦を続ける生活ぶりや五輪に懸ける思いを明かした。(取材、構成・大和田 佳世)

 カノアはプロサーファーを目指していた父・勉さんと母・美佐子さんが「子供を世界に通用するような人材に育てたい」と移住した米・カリフォルニアで生まれた。初めて海に入りサーフィンをしたのは3歳の頃。

 「当時の映像や写真を見ると、ずっと笑っている。楽しかった覚えはある。海にいつも入りたかった。嫌になったこと? まだない」

 6歳で地元の大型サーフショップがスポンサーにつき、9歳で米国の最年少強化選手に選出された。その頃から大会中に浜から父が送るアドバイスを断った。

 「1人で海に入っているから、自分で決めないと。世界のトップはアドバイスをもらっていないから。そういうハンデみたいなのはダメだと思った」

 2009年にアマチュアサーフィン連盟の年間史上最多30勝を挙げ、12歳で全米チャンピオンに上り詰めた。「まだ早い」という父の反対を押し切り、米国外の大会へ挑み始めた。

 「30勝して、アマチュアはもういい、世界のサーファーと戦いたい、と思った。自信があったので説得して、(11歳で)オーストラリア・ゴールドコーストのジュニア大会に出たら決勝までいった。12歳の頃には年70%くらいは転戦していた」

 両親の期待以上に早く世界へ飛び出し、誰とでも、どこでもなじめる性格でどんどん友達の輪を広げた。今では5か国語が話せる。

 「勉強しようというより、ポルトガルやブラジルに友達が多いので、自然としゃべり始めちゃった感じ。英語が一番自然で、次がポルトガル語。スペイン語、日本語が同じくらいでフランス語は勉強中」

 人懐っこい性格で、憧れの“神様”ケリー・スレーター(米国)にもかわいがられている。

 「コーチではないけどアドバイスをくれる。2年前にフィジーに呼んでくれて、チューブや大きな波の乗り方を教えてくれた」

 16年に史上最年少、アジア人で初めて世界最高峰の選手が集まるWCTに参戦し20位に入り、17年は17位と順位を上げた。

 「最初は周りが僕をどこまでいくの?と見ていた。最終戦のパイプ・マスターズ(ハワイ)で決勝まで残って、できるんだ、と思われた。自信がついたし、点数も出るようになったし、周りの雰囲気も慣れてきた。17年も同大会で3位で終われた。これから成績は良くなっていくと思う」

 カリフォルニアの自宅にも、祖父母が暮らす日本にも滞在できる日は多くない。文字通り、世界中を転戦する生活にもストレスを感じることはないという。

 「どこへ行っても家に戻った、という感覚でいる。行きたいレストラン、ビーチがある。適応するのは大切。普通の生活も、海も。波が来なくても適応しないといけない。世界で一番好きな場所? 難しいなぁ。答えられない。海とおいしい食べ物、友達がいれば、それでいい」

 東京五輪の新種目に採用され、2月には日本連盟の強化指定選手に決まった。日本には男女1枠が与えられるほか、WCT上位10人が五輪切符を得られる見込みなど、目指す道がよりはっきりして今季を迎えた。

 「WCTのチャンピオンと、五輪のチャンピオンは別。みんなの前で代表として戦いたい。楽しみにしている」

 五輪で会いたい他競技の選手は「(テニスの)錦織(圭)さん。あと、ゴルフが好きなので松山英樹さん」と同じく世界の舞台でトップを競う選手を挙げた。日本でサーフィンの知名度は高いとは言えない。

 「サッカーでゴールした時に盛り上がるみたいに、ビーチでファンが声を思い切り出して、ライディングが終わったら盛り上がるのが好き。サーフィンはまだメジャーではないので、(サッカーのように)なってもらいたい気持ちもある」

 ◆五十嵐 カノア(いがらし・かのあ)1997年10月1日、米カリフォルニア州ハフィントンビーチ生まれ。20歳。3歳からサーフィンを始め、2009年に米アマチュア連盟の大会で史上最多年間30勝を挙げ、10年に全米アマ王者に。16年からWCT参戦。180センチ、75キロ。カノアはハワイの言葉で「自由」の意味。家族は父・勉さん(53)、母・美佐子さん(52)。弟のキアヌさん(15)もサーファー。

 ◆東京五輪への道 男女各20人が出場できる。WCT上位の男子10人、女子8人に出場権が与えられる。残りは19、20年の世界選手権に相当するワールドゲームズなどの成績で決まる。開催国の日本には男女1枠が与えられる。

 ◆ワールド・チャンピオンシップツアー(WCT) 世界プロサーフィン連盟(WSL)が主催する最高峰ツアー。18年の男子は11大会(別表の通り)で、前年のCTランクの上位22人、クオリファイング・シリーズ(QS)上位10人、ワイルドカード(WC)2人の計34人が通年参戦できる。日本では翌年のCT入りを競うQS4大会が開催予定。五十嵐は昨年、東京五輪会場の千葉・一宮町で行われた一宮千葉オープン(QS6000)に出場した。

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