ぶっ飛んだもの勝ち!五輪新種目・BMXフリースタイルパーク初代女王狙う大池水杜

スポーツ報知
東京・駒沢オリンピック公園で仲間と練習する大池水杜。新採用種目で上位を目指す(カメラ・酒井 悠一)

 新種目を加えて、2020年東京五輪では自転車競技が11種目に拡大されて行われる。スポーツ報知では2週続けて、メダルの期待がかかるガールズライダーを紹介。今回は新たに採用されたBMXフリースタイルパークで、初代女王を狙う大池水杜(みなと、21)=フリー=。ダイナミックなジャンプを武器に、4月の国際大会FISE(5~7日、広島)で8位入賞。日本女子初のプロライダーの素顔とBMXに懸ける思いに迫った。

 飛ぶ。舞う。着地時の焦げるタイヤのにおいと、DJがかける爆音のヒップホップをバックに、大池は華麗なトリックを続々と決める。

 「ぶっ飛んだもの勝ち、っていうか、楽しまないと絶対勝てない。飛んでる時は私一人に注目してくれるし、それもたまらない」

 BMXフリースタイルパークに出会ったのは、中学2年生の時だった。幼少期から、父・武夫さんと1つ年上の兄・光(ひかり)さんと、バイクレースやモトクロスに触れてきた中で、派手で大胆な技を繰り出す“ぶっ飛んだ”競技にひかれた。

 「普通の女の子ならこんなにけがする自転車乗らないだろうし、21歳にもなったらメイクしたり、かわいい格好して遊んだりとか…。でも私、スカート持ってないんですよ(笑い)。でも、乗ってる時間が一番楽しいし、飛ぶ時のハンパない爽快感が好きで」

 高校1年時に大人に交じってシンプルセッション(エストニア)に出場し、初の世界大会で5位入賞。卒業して建築関係の会社へ就職したが、思うように自転車に乗れなかったという。

 「木造住宅の設計図をソフトで書いたりしてたんですけど、『けがして仕事に影響が出たら』って思うと練習も思い切ってできなくて。実際、顔から地面に激突して打撲した時は、そこから1週間くらい記憶がありません。今もそのけがの影響で、夜中に顔がけいれんして目が覚めたりします」

 そんな中、昨夏届いた世界最高峰「Xゲーム」の招待。まず、やったのは仕事を辞めることだった。

 「職場に迷惑かけたくなかった。東京五輪に採用されて、新しい目標もできたし、そこまでBMXで生きていこうって。1か月くらい、米国の選手と連絡取りながらパークを巡ったり、大会に出たりしました」

 指導者がおらず、国内大会も女子部門がないため、常に男子と切磋琢磨(せっさたくま)してきた。昨年からW杯に参戦し、中国大会5位、世界選手権4位と着実に力をつけたが、世界一よりもつかみたい夢がある。

 「五輪種目になっても、小さい頃から乗ってきた私にとって、遊びは遊び。生活の一部っていうイメージなんです。だから、一番は旦那さんと子供と、いつか家族で楽しく乗りたい」

 7年間乗り続けたBMXはどんな存在なのだろう。

 「こういう言い方が正しいのか分からないけど、趣味というか、遊び道具というか…。小さい子がボールとグラブ持って、公園でキャッチボールするのと同じなんです。それが、私にとってはBMXだった」

 交差する歓声と悲鳴、そして鳴りやまない拍手。日本中をくぎづけにするまで、大池はぶっ飛び続ける。(太田 涼)

 ◆大池 水杜(おおいけ・みなと)1996年12月2日、静岡・島田市生まれ。21歳。幼少期からモトクロスやバイクトライアルに取り組み、六合中2年時にBMXフリースタイルパークに転向。島田工高1年時に初出場したシンプルセッションで5位となり頭角を現す。好きな食べ物はラーメンと納豆。趣味は車で洗車やタイヤ交換も自分で行う。家族は両親と兄。

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