モスクワ世陸1万メートル5位の新谷仁美、5年ぶり復帰戦も「全然ダメ」

スポーツ報知
日体大長距離競技会女子女子3000メートルで、先頭を走る新谷仁美

 2013年モスクワ世界陸上女子1万メートル5位の新谷仁美(30)=ナイキTOKYO TC=が9日、世陸以来約5年ぶりの復帰戦となる日体大長距離競技会(横浜・日体大健志台陸上競技場)の3000メートルに出場した。9分20秒74の2位で目標としていた7月のホクレンディスタンスチャレンジ5000メートルの参加標準記録(9分50秒)を突破。「走ることは相変わらず楽しくない」と“新谷節”も健在だったが「世界で戦う、活躍することが仕事。1万メートルを想定して取り組む」とトラックを主戦場に東京五輪を目指すことを明かした。

 引退前から積極果敢な走りが持ち味だったが、この日も終始先頭でレースを展開した。2400メートル付近で吉川侑美=資生堂=にかわされたが、独特の高速ピッチと高いスピードを見せつけた。レース後は「(1キロ)3分5秒ペースが最低ラインだったので全然ダメ。中途半端は嫌い」と自らに厳しい評価。それでも「走るのは楽しくもないし、しんどい。でも、仕事として取り組めるているのは、とても恵まれている」と周囲への感謝も忘れない。

 14年1月の引退宣言後は会社員として働き、昨秋から走り始めるも恥骨骨折で練習を断念。今年に入って本格的に練習を再開し、55キロあった体重も45キロまで絞った。指導する男子800メートル前日本記録保持者の横田真人コーチ(30)は「覚悟が違う。ここまで追い込める選手は他にいない」と女王の復活を絶賛した。

 報道陣へ、開口一番「暑い中、ありがとうございます」と頭を下げた新谷。招集所では、腰ゼッケンを受け取り忘れそうになったり、スタート前も胸に手を当て、思いをはせるように足元を見つめた。「昔からすごく緊張しちゃうタイプで…。モスクワ世陸の時も、スタート前に号泣しちゃったりしたんです」と振り返る。それでも、5年ぶりのレースとは思えないほど、堂々としたレース運びをみせた。東京五輪まであと2年あまり。「まだ先のことを口にできるほどの結果を出していない」と謙遜するが、大きな一歩を踏み出した新谷は、笑顔でグラウンドを後にした。

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