【箱根への道】世界陸上で箱根OB選手が不振 青学大・原監督ら長距離界へ提言

2015年9月16日10時52分  スポーツ報知

 北京世界陸上(8月22~30日)で、箱根駅伝OBの選手が不振に終わった。一部では「箱根駅伝は人気があるだけでトラック、マラソンの強化につながっていない」という“弊害論”までささやかれているが、本当にそうなのだろうか。マラソンで21位と苦戦した藤原正和(34)=ホンダ=、今年の箱根駅伝で初優勝した青学大の原晋監督(48)らが、日本長距離界のために提言した。

 北京世界陸上の男子長距離種目の日本代表8選手のうち、マラソンの前田和浩(34)=佐賀・白石高→九電工=を除く7選手が箱根駅伝の経験者。みんな新春の箱根路を沸かせたスターだったが、世界の強豪に打ち負かされた。

 箱根駅伝の華々しい活躍と北京の不振の落差が大きく、一部で“弊害論”が湧き起こった。今回マラソンで21位に終わった藤原は、自身の立場を守るのではなく、日本長距離界の将来を考え、問題を提起した。

 「箱根駅伝弊害論は私が学生の時からありました。しかし、そうは思いません。20歳前後に20キロという距離に取り組むのは、将来のマラソンにプラス。実業団チームに籍を置く者の発言としては適当ではないかもしれませんが、むしろニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝=7区間100キロ)に構造上の問題があると感じます。マラソンにつながる区間は4区(22キロ)だけですから」

 中学生の駅伝の多くは全区間約3キロで行われる。高校駅伝は7区間42・195キロで1区間平均約6キロ。箱根駅伝は約20キロ。大学までは距離が延びるが、実業団の駅伝は1区間平均約14キロと短くなる。大学卒業後、伸び悩む選手が増える現実と無関係ではないだろう。

 大学駅伝界の異端児を自任する青学大の原監督は人気面を指摘する。

 「箱根駅伝は小中学生に夢を与え、競技普及という面で貢献している。箱根駅伝がなかったら、日本の長距離界はもっと弱体化していますよ。箱根駅伝が悪いのではなく、より人気のある大会が日本陸上界にないのが問題なんです。野球界には高校の甲子園の上にプロ野球が存在しています。日本陸連に明確なビジョンがないことが残念です」

 中国電力時代、抜群の行動力とアイデアで「伝説のカリスマ営業マン」と呼ばれていた原監督は大胆な提案を示す。

 「毎年3月下旬に大学も実業団も参加する80キロ8区間の駅伝を開催すれば、盛り上がるでしょう。実業団ランナーは大学生に負けられないから、燃え尽き症候群にかかっている暇はありませんよ。1人10キロほどの距離はトラックシーズンへのいい準備になるし、5000メートル、1万メートルの競技力アップにつながるはずです」

 日本長距離陣の不振の要因にはケニア、エチオピアなどの強豪国に加え、ウガンダ、エリトリアなどが急速に力をつけたこともある。さらに、それらの強豪選手が他国籍を取得し、レベルアップしている。

 1920年に「世界に通用する選手を育成する」という理念を掲げて創設された箱根駅伝。大会を主催する関東学生陸上競技連盟の青葉昌幸会長(73)は力説する。

 「各大学の指導者が選手に『箱根は通過点』という意識を植え付けさせるのが重要。例えば、ミーティングで積極的に五輪や世界陸上などの話をする。大東大の監督時代、私はいつも世界を見据えた話をしていました」

 今回、1万メートルで惨敗した村山謙太(22)=旭化成=は表情を引き締める。

 「今年の箱根駅伝を走ったばかりの僕が北京でダメだったので(弊害論を)言われてしまうと思うが、『箱根から世界へ』という理念は間違っていないと信じています」

 村山謙は11月の八王子ロングディスタンスで、高岡寿成(現カネボウ監督)の1万メートルの日本記録(27分35秒09=01年)更新を目指すという。実現すれば14年ぶり。16年リオ五輪への第一歩になる。

 「箱根から世界へ」の看板を下ろすわけにはいかない。東京五輪まであと5年。100年に及ぶ箱根駅伝の伝統と歴史が試されている。(竹内 達朗)

 ◆北京世界陸上の箱根駅伝OBの不振

 ▼マラソン 中大時代に花の2区と山上りの5区で区間賞を獲得した藤原が21位。「初代・山の神」で順大出身の今井は、7月下旬に髄膜炎で欠場。高校から実業団に進んだ前田も40位と大敗し、日本勢は9大会ぶりに入賞を逃した。

 ▼1万メートル 明大OBの鎧坂の18位が最高。駒大OBの村山謙、東洋大OBの設楽悠はトップに2周差もつけられた。

 ▼5000メートル予選 早大OBの大迫が乱高下するペースに終盤まで対応。残り1周のスプリント力で遅れ、0秒41差で決勝を逃した。城西大OBの村山紘は序盤から遅れた。

  • 楽天SocialNewsに投稿!
箱根駅伝
報知ブログ(最新更新分)一覧へ
今日のスポーツ報知(東京版)