貴乃花親方に「ついて行けない」独り相撲2票落選…求心力低下で実質“阿武松一門”

スポーツ報知
理事選を終え、淡々とした表情で引き揚げる貴乃花親方(カメラ・堺 恒志)

 日本相撲協会は2日、東京・両国国技館で全親方101人の投票による理事候補選挙(理事選)を行い、劣勢の中で強行出馬し5期連続当選に挑んだ貴乃花親方(45)=元横綱=は2票にとどまり落選した。定数10人に11人が立候補した中で最下位の惨敗。貴乃花一門は初当選した阿武松(おうのまつ)親方(56)=元関脇・益荒雄=に実権が委譲していることも判明し、貴乃花親方は2年後の次回理事選でも返り咲きが難しくなった。

 午後3時12分、落選が決まった貴乃花親方は選挙が行われた相撲教習所の階段を静かに下りてきた。自らに投じられたのはわずか2票。落選は協会職員から告げられたという。「結果をどう受け止めるか」などの質問には無言のまま厳しい表情で迎えの車に乗り、都内の部屋に戻った。

 1日の会合で貴乃花一門が持つ11票(一門内8+無所属3)は、自身の1票を残して阿武松親方に集めることを決めた。“民意”に訴えることで他の一門からの投票を期待したが、1票にとどまった。相撲協会関係者によると、その1票は長男で靴職人の花田優一さんの義父である陣幕親方(元幕内・富士乃真)=高砂一門=からの“身内票”。劣勢をはね返して初当選した10年の「貴の乱」は再現できなかった。

 貴乃花親方は元横綱・日馬富士関の暴行問題に関する対応を巡って初の理事解任処分を受けた。今回は辞退を勧めた一門内の声にあらがって強行出馬。同一門内の親方は「分裂はしていない」と結束を強調したが、阿武松親方に一門の持ち票が集まる前の段階で求心力を失っていた。暴行問題で協会の聴取を拒んで解決を遅らせた態度などに、志を共にしてきた親方衆からも疑問の声が上がり、面と向かって「あなたにはもう、ついていけない」と話した親方もいたという。

 昨年12月に錣山親方(元関脇・寺尾)ら3人が時津風一門を離脱し、理想に共鳴する阿武松親方の支持に回った。この動きによって貴乃花親方の発言力は弱まった。今年になり貴乃花一門から相撲協会に届いた書類の代表者の氏名欄には阿武松親方の名前が記されていたという。理事選は実質的に阿武松一門として戦っていた。

 貴乃花一門には阿武松親方が理事を務めるのは1期限定で、2年後の次回選挙では貴乃花親方が復帰するというシナリオがあるという。だが返り咲きには険しい道が待つ。かつて協会顧問を務め、不明朗な金銭授受などの背任行為があったとして協会に訴訟を起こされた人物と貴乃花親方は近いとされている。同親方に憧れていた若手親方は「この人間関係に失望した。以前は投票したいと思ったが、その気持ちは消えた」と漏らした。わずか2票に終わった事実は、理事再選が難しい現実を物語っている。

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