貴乃花親方、改心出勤5時間…師弟で「出直しです」貴公俊は関取で異例のちゃんこ番

スポーツ報知
会場のファンにサインをする貴乃花親方(カメラ・石田 順平)

 大相撲春場所8日目(18日)の取組後に東十両14枚目・貴公俊(たかよしとし、20)が付け人の序二段力士を暴行した問題で、師匠の貴乃花親方(45)=元横綱=が20日、後悔の念を口にした。京都・宇治市内での朝稽古後、内閣府に日本相撲協会に対する告発状を出すなど、自身の一連の行動が弟子の負担になった可能性があるとして、悔やむ気持ちを告白。謹慎休場中の貴公俊には、関取は通常担当しない「ちゃんこ番」を命じたことも明らかにするなど、師弟は不祥事からの出直しを始めた。

 振り上げた拳が、弟子の暴行問題となって返ってきてしまったのかもしれない。貴乃花親方は、そう自ら認めるように話した。「普段、そういうことを過去にもしたことがない子。一連の私の師匠としての行動などで負担をかけていたのかなと思いますので、師匠の私のほうが精進しなければならないと思います」

 貴乃花親方は、元横綱・日馬富士関が弟子の貴ノ岩を暴行した問題で、日本相撲協会の対応を問題視。9日に内閣府に告発状を提出したことで、春場所直前の角界は一気に騒がしくなった。また、初日から欠勤し、5日目から会場に姿を見せても数分で職場の役員室を退出。協会執行部への抵抗の姿勢は部屋周辺を緊張感で包み、無意識のうちに弟子に重圧を与えていたのでは、と後悔の思いを口にした。

 この日の稽古後には、珍しく関取衆も含めて竹ぼうきで土俵を掃き清めた。稽古場の外に無造作に置かれていた毛布も、「お客さんがきてすぐ使えるように」と、整理するように指示。報道陣には、「話しましょうか」と自ら歩み寄った。物議を醸した役員室への出勤も、正午から5時間以上も滞在して2日続けての“出勤扱い”となった。これまでの言動とは違い、明らかに反省をにじませている。

 「あるまじき行為」と暴行を断罪した貴公俊には、関取ながら、ちゃんこ番をすることを命じた。「反省しきり。出直しです。前相撲からやり直しなさいということです」と、入門した5年前の初心を取り戻せという意図を込めた。

 春場所中は以前所属していた力士で、調理師免許を持つ先輩の指示でちゃんこを用意する。稽古と両立しながらの準備は難しく、身を粉にすることで足元を見つめ直す。相撲協会が下す処分は師弟共々、29日に決まるが、それより先に出直しの動きは始めた。

 部屋関係者によると貴公俊はまだ個室が与えられ、付け人も離れていないというが、3勝5敗から休場して夏場所(5月13日初日・両国国技館)は幕下陥落が確実。それに先だっての再スタートとなる。

 〇…暴行を受けた序二段力士は、10日目に土俵に上がった。結果ははたき込みで敗れたが、「師匠に『土俵に上がれる』と言った。最後までやります」と、2勝3敗と黒星先行も前向き。貴公俊からの日常的な暴力は否定。「自分も悪かったし、向こうも謝ってくれた。付け人としてサポートできなかった」と、和解したことを明かした。宿舎出発前には貴乃花親方から清めの塩をかけてもらった。「無事に帰ってこいという思いやり。感謝してます」と語った。

 ◆ちゃんこ番 相撲部屋の食事は、幕下以下が当番制で調理する。「ちゃんこ長」の指示の下、野菜の切り出しや料理を配膳。ある部屋持ち親方は、「マニュアルはない。兄弟子の仕事を見て覚える」。新弟子は皿洗い、米とぎから始めるが、年数を経れば中にはアンコウの解体もこなすほどに熟達する。ちゃんこ番の日は稽古を早めに切り上げる。関取以上は特権として行わない。貴乃花部屋はダシにトマトソースを加えた「トマトちゃんこ」が名物。

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