鶴竜、8場所ぶり復活V…長男誕生後初の賜杯に「抱いて写真が撮れる」

スポーツ報知
4度目の優勝を果たし、祝勝会でタイを掲げ喜ぶ鶴竜(右は井筒親方=カメラ・石田 順平)

◆大相撲春場所14日目 ○鶴竜(はたき込み)豪栄道●(24日・エディオンアリーナ大阪)

 1敗の横綱・鶴竜がはたき込みで大関・豪栄道を下して14日目に8場所ぶり4度目の優勝を決めた。昨年は度重なるけがで6場所中5度の休場。進退が問われた2018年は今場所も右手薬指脱臼などの不安を抱えて休場の可能性すらあったが、一人横綱の意地で強行出場を決断。春の大阪で華麗な復活劇につなげた。2差で追っていた大関・高安、前頭6枚目・魁聖、同14枚目・勢も3敗を守ったが及ばなかった。

 長かった。苦しかった。結びで豪栄道に土俵際まで迫られたが、鶴竜は右足だけで踏ん張り、はたき込んだ。「相撲は最悪だったけどね。支えてくれた人たちをもう一度喜ばせたかった」。8場所ぶり復活Vに土俵で安堵(あんど)の息を吐いた。花道では付け人全員にねぎらいの言葉をかけた。

 どん底まで落ちた昨年が糧になった。「つらかった…。(けがが)治ったと思ったらまた違うところがね」。両足首など負傷続きで6場所中5度の休場。師匠の井筒親方(元関脇・逆鉾)が進退問題に言及する事態にまで追い込まれた。32歳を迎えた夏巡業では「鶴竜は強い横綱だというところをもう一度見せたい」と心境を吐露。焦りもあったが、治療の過程で様々な人の言葉に耳を傾けた。

 その一人が同じ横綱・白鵬を復活へと導き、自身も信頼する関節の名医・杉本和隆氏だった。「一歩ではなく、半歩」。じっくりと復活への道を歩む大切さが心を落ち着かせてくれた。

 今年初場所の皆勤11勝で周囲の雑音を封じた。今場所も右手薬指脱臼などの不安を抱えて休場の選択肢もあったが一人横綱の意地で強行出場。得意の右前まわしが取れなくても慌てない。不本意でも引き技で勝機を見いだした。苦難の1年が横綱・鶴竜を強くした。

 4度目の賜杯は味わい深かった。無数のフラッシュを浴び、最後はずっとそばにいてくれた家族に感謝した。昨年5月に第2子の長男が誕生してからは初めての歓喜の瞬間。「諦めずにチャレンジしようという気持ちは正解だった。これで抱いて(優勝の)写真が撮れる」。千秋楽までとっておくはずの笑顔がようやくのぞいた。(小沼 春彦)

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