栃ノ心、10勝 夏場所で大関取り「来場所が大事。まずけがを治す」

スポーツ報知
逸ノ城(右)を寄り切りで下し10勝目を挙げた栃ノ心(カメラ・能登谷 博明)

◆大相撲春場所千秋楽 ○栃ノ心(寄り切り)逸ノ城●(25日・エディオンアリーナ大阪)

 関脇・栃ノ心が小結・逸ノ城を寄り切って10勝目を挙げた。今場所直前に左脚つけ根付近を痛めて万全の状態ではなかったものの、平幕優勝した初場所に続く2桁白星で殊勲賞も獲得。夏場所(5月13日初日・両国国技館)では大関取りに挑む。技能賞は来場所新三役が確実な前頭筆頭・遠藤、敢闘賞は自己最多12勝の同6枚目・魁聖が受賞した。14日目に優勝を決めていた横綱・鶴竜は、結びで大関・高安に敗れて13勝にとどまった。

 怪力対決に館内がざわついても、栃ノ心は平常心だった。幕内最重量・215キロの逸ノ城と、がっぷりの我慢比べ。土俵中央で両足を浮かされても動じない。動きの止まった相手の隙を見逃さず、得意の左上手を握り直して一気にギアチェンジ。「まずは先に攻めさせて、相手を疲れさせてから攻めようとね」。作戦通りに寄り切った。

 14勝で平幕Vの初場所に続き、関脇に返り咲いた春の大阪で10勝到達。夏場所で大関取りに挑む。八角理事長(元横綱・北勝海)は、「勝ち方がいい。自覚も出てきた。(今場所の)2桁なら文句なし。当然、来場所がそういう場所になる」と明言。境川審判長(元小結・両国)も「9番と10番(勝つの)では違う」と、安定感を評価した。大関昇進目安は「三役で3場所33勝」でも、平幕優勝が評価に加えられる公算は大きい。

 歯を食いしばって15日間を乗り切った。「やっと終わった。一つ一つ(の白星)が大きかった」。場所前に負傷した左脚つけ根付近の激痛は強行出場するうちに、左太もも全体にまでが広がっていた。

 痛みから腰が高くなり、膝も曲がらず思うような相撲が取れなくても、母国・ジョージアで幼少から培った柔道技も駆使。6日目には遠藤を「内股」でぶん投げた。「小さい頃から山下(泰裕)さん、古賀(稔彦)さんらの世界大会のビデオを見ていた」。脳裏に焼きついていた日本の五輪メダリストのイメージが、栃ノ心の体を突き動かした。

 「痛み止め? それは内緒」と笑ってごまかしたが、千秋楽でやっと会心の相撲が取れた。2度目の殊勲賞も獲得。「来場所が大事になる。けがを治して稽古して初日を迎えたい」。決して「大関」とは口にしなかったが、その目は本気だった。(小沼 春彦)

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