逸ノ城、3連勝スタートも「悪い癖出た」反省

スポーツ報知
逸ノ城(左)ははたき込みで大栄翔を下す(カメラ・佐々木 清勝)

◆大相撲 夏場所3日目 ○逸ノ城(はたき込み)大栄翔●(15日・両国国技館)

 もう一人の大関候補で関脇・逸ノ城が3連勝スタートを決めた。物言いがついた前頭3枚目・大栄翔との際どい一番を制して、2014年秋場所の入幕後初となる2場所連続の初日から3連勝。次の名古屋場所(7月8日初日・ドルフィンズアリーナ)での大関取りに向けて着実に足固めの白星を重ねた。新小結・遠藤は大関・豪栄道を撃破。全力士で今場所初めて横綱、大関陣に土をつけた。大関昇進をかける関脇・栃ノ心は3連勝。

 逸ノ城は1分以上も続いた協議の間、後悔の念を押し殺して気持ちを切り替えていた。「取り直しだと思った。悪い癖が出ました」。立ち合いで右に変わった大栄翔に後手を踏んだ。苦し紛れに首を押さえてのはたき込みは予想以上に勢いがつき、相手が両手をつくと同時に自分の左足も俵を越えた。「前にいくつもりで上がったのに引いちゃった」。藤島審判長(元大関・武双山)の「軍配通り」の声に、申し訳なさそうに勝ち名乗りを受けた。

 新入幕で史上初めて横綱と2大関撃破を成し遂げて13勝を挙げた4年前の実績から「怪物」と呼ばれ、すぐさま大関候補と呼ばれた。だが期待とは裏腹に大関の起点となる三役での2ケタ白星は一度もなし。不振も重なり平幕に低迷し、春場所で三役(小結)に返り咲くまで16場所も要した。

 苦悩を支えたのは大好きな酒や羊の肉でもない。気分転換に聴く日本の演歌だった。「巡業とかで聴いて『これいいな』と思ったんです。曲? 男女(歌手を)問わず何でも聴きます」。25歳にしては渋い趣味だが、白鵬は夏川りみの「涙そうそう」が持ち歌で、鶴竜は落語で日本語を覚えた。モンゴル出身力士には新鮮に映る日本の伝統娯楽と相性がいい。

 春場所は小結で9勝。今場所で12、13勝すれば「大関」の地位は一気に現実味を帯びてくる。「悪い癖を繰り返さないように。あしたこそ前に出ます」。こぶしの利いた歌を聴き、命拾いした一日を反省。今場所の栃ノ心に続いて復活間近の怪物が大関の道を切り開く。(網野 大一郎)

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