栃ノ心、欧州出身3人目大関へ!無傷10連勝に審判部長「濃厚です」

スポーツ報知
全勝を守り、支度部屋で笑顔を浮かべる栃ノ心(カメラ・能登谷 博明)

◆大相撲 夏場所10日目 ○栃ノ心(寄り切り)千代大龍●(22日・両国国技館) 

 ジョージア出身の関脇・栃ノ心(30)=春日野=の大関昇進が決定的となった。前頭4枚目・千代大龍(29)=九重=を寄り切って初日から10連勝。盤石の内容で優勝争いをリードし、3場所連続2ケタ勝利を挙げて合計34勝と目安をクリア。昇進を推薦する阿武松(おうのまつ)審判部長(元関脇・益荒雄)が打ち出し後に、「濃厚です。大関相撲」と明言した。欧州出身では3人目。春日野部屋からは1962年夏場所後に同時昇進した栃光、栃ノ海以来56年ぶりに大関が場所後に誕生しそうだ。

 誰も栃ノ心の大関昇進を疑わない。連日の力技で土つかずの10連勝。9日目は162キロの大栄翔を、この日は190キロの千代大龍を外四つから2度、つり上げて寄り切った。「やっぱり、気持ちいいな。うれしいよ」と大きく息を吐いた。師匠・春日野親方(元関脇・栃乃和歌)の56歳誕生日に、3場所連続2ケタ白星到達の“吉報”を届けた。

 昇進目安は三役で直近3場所33勝。評価の起点は平幕だった14勝初Vの初場所となるが、春場所に続く10勝到達で、計34個目の白星を積み上げた。正式な昇進は千秋楽に審判部の意見を統一して推挙されるが、阿武松審判部長は「(大関昇進は)濃厚です。内容もいいし、盤石の相撲っぷりも安定している。“大関相撲”を取っている」と早くも合格点を与えた。花道では昇進を確信したファンから花束を渡される一幕もあった。

 弟子の快進撃に春日野親方も「まわしを取れば自信を持っている。最初は相撲が雑で力任せだった。(元横綱)千代の富士さんの映像をずっと見るように言ってきた。大関はひとつの目標であって、こうなれば2匹目のなんとか(優勝)が来るかもしれない。楽しみですね」と入門当時を思い返し、成長に目を細めた。

 2006年春場所の初土俵から入門13年目でつかんだ成功だが、春日野部屋入門を一度は断られている。柔道の欧州ジュニア銀メダル、サンボの同王者としてジョージアから来日も、当時の在籍力士は日本人だけ。生活環境への適応を憂慮した師匠は首を縦に振らなかった。それでも、懇願して稽古参加にこぎつけると、その場で幕下力士を投げ飛ばした。あまりの怪力ぶりに周囲はあぜん。実力で角界入りをつかみ取った。

 師弟は固い絆で結ばれている。「師匠は今でも怖い。基本、怖いよ」と苦笑いしながら「誕生日に勝てて良かった。感謝しているからね」と白星プレゼントに満足げ。琴欧洲(ブルガリア)、把瑠都(エストニア)に続く欧州出身3人目の新大関誕生が濃厚となり、次なる恩返しは自身2度目の賜杯だ。(小沼 春彦)

 ◆大関誕生までの流れ

 27日の千秋楽までに審判部内で意見を統一。昇進と判断した場合は審判部長が理事長に昇進の可否を審議する臨時理事会(30日)の開催を要請。同理事会で昇進が決まると協会から使者が即日派遣され、昇進伝達式が行われる。翌場所の番付発表を待たずに、この時点から大関として扱われる。

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