鶴竜、初の2場所連続Vへ栃ノ心に並んだ

スポーツ報知
鶴竜(左)が寄り切りで逸ノ城を下す

◆大相撲 夏場所13日目(25日・両国国技館)

 横綱・鶴竜が1敗を守り、自身初となる2場所連続優勝への道を開いた。結びで関脇・逸ノ城を寄り切って12勝目。大関昇進が濃厚な関脇・栃ノ心が今場所初黒星を喫したため、10日ぶりにトップに再浮上。14日目には栃ノ心と、賜杯の行方を左右する一番に臨む。横綱・白鵬も2敗を守って逆転優勝の権利を残した。千秋楽で3強が2敗で並べば、1994年春場所以来24年ぶりに三つどもえ戦で優勝争いが決着する。

 鶴竜の頭脳戦術が際立った。結びの立ち合いで右頬に張り手一発。ひるんだ逸ノ城の両脇を即座に狙った。もろ差しで相手の上体を起こすと、225キロの巨体を下からじわりと押し込んだ。体重差66キロを感じさせない寄り切りで12勝目。「あそこまで(両腕が)入ったら早めに勝負にいかないとね」。無敗の栃ノ心が敗れ、賜杯争いのトップに並んだ。

 過去3度の優勝翌場所はすべて2ケタ勝利にすら届かなかった。今場所の“違い”は精神面の変化にある。場所前「(優勝4度は)横綱としてまだまだ」と挑戦者としての立場を再確認。立ち合いで変化した10日目の琴奨菊戦はブーイングを浴び、「勝ちたい気持ちが強すぎた。負けた方がよかった」と猛省を繰り返した。

 32歳になった今も、他のトップアスリートの姿勢を学ぶ。4月の春巡業中には、サッカー日本代表のMF長谷部誠のテレビ番組を見て心を整えた。今季は練習を続けながらもプレーしない米大リーグ・マリナーズのイチロー会長付き特別補佐にも「どんな気持ちか興味がある。イチローさんの『毎日同じことを繰り返すことの難しさ』っていうのは参考にしているから」と明かした。この日も支度部屋でてっぽう、鏡の前で立ち合いチェック、斜めのすり足などルーチンを入念にこなし、土俵に向かった。

 自身初の2場所連続Vへ、14日目は栃ノ心との大一番が待つ。「楽しみ? それはない。自分の相撲に集中する」。闘志は静かに燃えている。(小沼 春彦)

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