鶴竜、栃ノ心ぶん投げ初連覇王手「綱の意地? そういうことを考えると変に力が入る」

スポーツ報知
栃ノ心(右)をすくい投げで下した鶴竜(カメラ・堺 恒志)

◆大相撲 夏場所14日目(26日・両国国技館)

 横綱・鶴竜が初の連覇に王手をかけた。大関昇進が確実な関脇・栃ノ心との1敗対決を、すくい投げで制して今場所初めて単独トップに浮上。千秋楽に白鵬との横綱対決に勝てば、2014年春場所の初優勝から過去3回失敗してきた2場所連続となる5度目の優勝を達成する。13日目の取組で右手首を負傷した栃ノ心が千秋楽に勝ち、鶴竜が負ければ優勝決定戦となる。3敗に後退した白鵬は優勝の可能性が消えた。

 怪力自慢につられても鶴竜は冷静だった。「がっぷり(四つ)より中に入った方が勝機がある」。栃ノ心の縦ミツ付近を両手で握りしめた得意のもろ差しから腰を落としてこらえた。最後は両肘を張って相手の上手を切り、次期大関を後ろ向きに投げ飛ばした。「自分の相撲を取ることだけに集中した」。雑念を捨て14年春場所後の横綱昇進後初の2場所連続13勝をもぎ取った。

 優等生横綱は“予習”も十分だった。この日の朝、「上と下のバランス(肉付き)が違う。上半身の力強さがついた。写真見ても前と違うのが分かるでしょ」と急成長した栃ノ心について詳細に解説。綱のプライドから力勝負を挑み、12日目に敗れた白鵬が反面教師。「綱の意地? そういうことを考えると変に力が入る」と生命線の技能を発揮することだけを考えた。

 昨年は5場所を休場。進退問題と直面する中で一つの境地にたどり着いた。「もう20代じゃないと自分に言い聞かせている。稽古だけ重ねても結果は出ない。やらない勇気が必要」と春巡業で語った。猛稽古で技を磨いた男には難しい決断だが、アップル社を創業したスティーブ・ジョブズ氏の、「何をしたかと同様に何をやらなかったかが大事」という生前の言葉を聞き自分の考えに確信を抱いた。

 場所中の朝、ファンの「iPhone」を自ら操作して写真を撮った“いい人ぶり”は健在。「連覇? 何度もそういうのを意識して失敗してきた」。平成以降に誕生した横綱10人で、鶴竜だけ達成していなかった連続優勝は無心でつかみ取る。(網野 大一郎)

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