稀勢の里、連日の土俵際逆転で89年北勝海Vとダブる3連勝 

スポーツ報知
気合の入った表情で勝ち名乗りを受ける稀勢の里(カメラ・川口 浩)

◆大相撲秋場所3日目 ○稀勢の里(突き落とし)豊山●(11日・両国国技館)

 8場所連続休場から復活に挑む横綱・稀勢の里が薄氷の勝利で全勝を守った。初顔の前頭2枚目・豊山の猛攻を土俵際の突き落としで逆転。3場所連続全休明けで初日からの3連勝は、平成初の優勝で復活した1989年初場所の横綱・北勝海(現八角理事長)と重なる。11勝で大関昇進が濃厚な関脇・御嶽海も無敗。白鵬、鶴竜も勝ち14年秋場所以来となる3横綱が初日から3連勝した。初のカド番の大関・栃ノ心は今場所初黒星。

 土俵下に転がり落ちてでも、稀勢の里が大切な白星を守り抜いた。先場所敢闘賞の豊山が繰り出す突き押しを、顔を紅潮させて受け止めた。一度は右上手を引いて反撃したが、新鋭の圧力に後退。俵に両足を乗せる窮地にも、最後は体を投げ出すように反転して突き落とした。物言いがついたものの軍配通り2日連続で逆転勝ち。「攻めの意識? それは良かった。変わらず集中した」。口を真一文字に結んだまま、浮かれることなく花道を引き揚げた。

 前回の初顔合わせは昨年九州場所で北勝富士に金星を配給しているが、そのハードルも乗り越えた。3場所連続全休明けの横綱が初日から3連勝したのは、89年初場所Vの北勝海以来29年ぶり。八角理事長は「俺の時は無我夢中だった」と振り返りつつ、この日の33秒6の逆転劇を「必死さは見えたが、それは自分で演出したもの。なぜ(右)上手を離したのか。まだまだ甘い」と厳しさを込めて激励した。

 02年秋場所で7場所連続全休から12勝して復活した貴乃花親方(元横綱)は、後輩横綱を包み込む熱気を感じ取った。「相撲人生を懸けて土俵に上がっている。やるしかない。そういう気持ちが表情から見えます。お客さんも自分の人生を(声援に)投影している。(02年秋の)私のときも特にそう感じました」と、横綱にしか分からない特別な感性と表現で再起を後押しした。

 幕内通算707勝。横綱・武蔵丸(現武蔵川親方)を抜き、歴代単独7位に浮上した。支度部屋では、真っ赤なタオルで流れ落ちる汗を拭った。「まあ、また明日もしっかりと」。激闘続きの序盤戦にも心の乱れはない。復活への視界が徐々に広がってきた。(小沼 春彦)

 ◆北勝海の89年初場所優勝 腰痛が悪化して、横綱7場所目の88年名古屋場所から3場所連続全休。マイナス190度の冷凍室に入るなど壮絶なリハビリを経て出場し、初日から14連勝。千秋楽で1敗の大関・旭富士(現伊勢ケ浜親方)に敗れたが、決定戦で勝利して4度目の優勝を果たした。

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