田子ノ浦部屋、異例の園田競馬場内に宿舎 高安「同じ勝負事」初Vへ刺激

スポーツ報知
園田競馬場内に作られた田子ノ浦部屋の稽古場。パドックを歩く競走馬の向こうに、部屋ののぼりが見える(カメラ・谷口 健二)

 大相撲春場所(3月10日初日・エディオンアリーナ大阪)に向けて、初めて兵庫・尼崎市の園田競馬場内に土俵と宿舎を構えた田子ノ浦部屋が26日、稽古をスタートさせた。レース開催日と一般見学初日が重なったこともあり、初優勝を目指す大関・高安(28)、現役引退したばかりの荒磯親方(元横綱・稀勢の里)をひと目見ようと大勢のファンが殺到。土俵の目の前を競走馬が走る異例の稽古環境で“勝負勘”も養う。

 午前10時の園田競馬場開門とともに、約300人の熱狂的なファンがなだれ込んだ。向かったのはパドックではなく、ガラス張りの投票所内に作られた土俵。高安が豪快な立ち合いで三段目力士をはじき飛ばす。1月まで現役だった荒磯親方は若い衆とぶつかり稽古。ダートコースの目の前で、まわしを締めた力士が猛稽古するという珍しい光景に「おおっ~」と、窓越しに感嘆の声は絶えなかった。

 朝稽古は、第1レース発走3分前の10時52分に終了。競馬場広報によると、11時の集計で通常の約2倍、1106人が来場し、その全てではないが入れ代わり立ち代わりと人々が稽古を見守った。慣れない環境での始動にも、初Vを狙う高安は「いろいろな方に見てもらって大相撲の発展につながれば」と歓迎。これまで競馬に接する機会はあまりなかったが、「同じ勝負事。勉強して相撲に生かせればいい」と興味津々だった。

 昨年まで同部屋は大阪市内の寺院に宿舎を構えていたが、田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)と親交のあった小牧太騎手から同競馬場を紹介された。稽古場は元々、繁忙期に稼働していた2階建ての投票所で、半透明のシートで馬券の自動券売機を目隠し。1階に土俵を作り、喫茶店のあった2階をちゃんこ場と寝泊まりする大部屋として活用する。一般見学は初日3日前の3月7日まで続けられる予定。27日にも高安と相撲を取る荒磯親方は「なかなか相撲に触れ合えない人に、少しでも興味を持ってもらいたい。敷地は広いからいろいろな運動もできる」と前例のない競馬場稽古を堪能した。

 今後はトークショーなど競馬ファンとの交流プランもある。田子ノ浦親方は「ぬるい稽古をしている力士がいたら(ダートコースを)走らせようかな。1周約1000メートル。下半身強化にもつながる」と目は本気。地方競馬と大相撲の異色コラボを春場所の躍進につなげていく。(小沼 春彦)

 ◆地方場所宿舎 年3回の地方場所で、各相撲部屋は稽古場を含めた宿舎を構える。伝統的に部屋ゆかりの寺院、公園、公民館に加えて後援者の施設を間借りすることが多い。一方で、16年春場所で武蔵川部屋が花園ラグビー場の敷地内、メインスタンド北側に土俵を作って話題に。芝田山部屋は今年もサッカーC大阪の本拠地・ヤンマースタジアム長居内にあるユースホステルを宿舎として利用。佐渡ケ嶽部屋は名古屋場所で、幼稚園内に土俵と宿舎がある。

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