できることは何でもやりすぎるくらいやる…記者が見た貴景勝の体を気遣う繊細さ

スポーツ報知
栃ノ心を押し出しで破った貴景勝(カメラ・朝田 秀司)

◆大相撲春場所千秋楽 ○貴景勝(押し出し)栃ノ心●(24日・エディオンアリーナ大阪)

 目を疑った。相撲担当時代のある日、焼き肉の締めに冷麺を頼んだ貴景勝がとんでもない行動に出た。おもむろにテーブルに置かれていた酢のボトルに手を伸ばし、蓋をねじり開けるとドバドバと入っていた酢を全て冷麺にぶちこんだ。

 あぜんとする私を横目に、とんでもなく酸っぱいであろう締めの一杯を勢いよく口へと流し込んだ。理由は「体にいいから」とさらり。当時の師匠・貴乃花親方(現・花田光司氏)の「必ず毎日梅干しを食べろ」という教えもしっかり守っていた。豪快な性格の中に、体を気遣う繊細さを持ち合わせているのだなと思った。

 真意は後日教えてくれた。「俺の相撲は、そんなに長くできる相撲じゃないの分かってるから」。身長175センチの低さからの突き押しが持ち味。四つ相撲には圧倒的に不向きな体で、立ち合いから一気に押す。幼少期からそれだけを磨き続けてきた。

 小兵だけに、体への負担も大きい。だからこそ、できることは何でもやり過ぎるくらいやる。力士生命を燃やすように毎日土俵に上がるからこそ、貴景勝の取組には一瞬の花火のような美しさがある。(16~17年相撲担当・秦 雄太郎)

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