高梨沙羅、復活の兆し「素直にうれしい」今季初の予選1位通過

スポーツ報知
力強い踏み切りで予選首位に立った高梨沙羅(カメラ・宮崎 亮太)

 スキージャンプの女子W杯札幌大会(13~14日)の予選が12日、試合会場の札幌・宮の森ジャンプ場で行われ、昨季W杯個人総合女王の高梨沙羅(21)=クラレ=が最長不倒の95メートルを記録。126・3点の首位で本戦進出を決めた。予選トップ通過は今季初めて。王手をかけているW杯男女歴代単独最多54勝目に向け、復調を印象づけた。岩渕香里(24)=北野建設=が93・5メートルで5位。伊藤有希(23)=土屋ホーム=も83メートルの6位で本戦に進んだ。

 鋭く、力強く。沙羅は不利な追い風を受けながらスルスルと空中を進み、最長不倒95メートルまで伸ばした。本来のジャンプが徐々に戻りつつある。「結果としては、素直にうれしい」と復活の兆しに充実感がにじむ。今季個人4戦で2勝を分け合うアルトハウス(ドイツ)、ルンビ(ノルウェー)の2強を抑え、今季初の予選トップ。昨年2月のW杯平昌大会で勝って以降、ずっと足踏みが続く男女歴代単独最多54勝へ、期待は大きく膨らんだ。

 参戦予定だったW杯ルシュノブ大会(6~7日・ルーマニア)が、雪不足で中止。ヒンターツァルテン大会(ドイツ)を終え帰国した先月下旬から今大会まで約3週間、国内で調整を積めたのが幸いした。W杯未勝利の今季、最大の課題は踏み切り。助走路での姿勢を低く保つことなどアプローチを改善し、持ち味の空中へ鋭く飛び出す姿を取り戻した。牧野講平トレーナー(38)は「瞬間的な動きの踏み切りを、どう(空中の)スピードに転換するか。筋力は十分あるので、体のコーディネーション(連動性)を高めた」。オフでの取り組みが形になりつつある。予選前の公式練習1回目も、ヒルサイズ(100メートル)に迫る98メートル。沙羅は「マキシマム(空中での最高点)までのスピードと高さが上がっている」と自ら分析した。

 地元開催のW杯。札幌市内から会場まで、愛車のハンドルを握る時間も楽しみの一つだ。「一人になれる時間なのでリラックスしながらいろいろ考えられる。イメージを膨らませて来られるのが良い」。試合前の短いドライブが、精神面の安定に一役買っている。もちろん、冬の札幌は路面も積雪して滑りやすいが「北国育ちだけあって、雪道も安全運転している」と牧野トレーナーは明かす。

 予選2位のアルトハウスとは3・1点、飛距離で約1・5メートルの僅差。3位のルンビも4・7点差で続いた。金メダルを狙う平昌五輪で、必ず倒さなければならないライバル。ホームの地の利で勝ち癖もつけたい。「絶好調まではいかないけど、70(%)くらいにはなった。(本来のジャンプが)できつつある」。地元で飾るW杯単独最多勝が、完全復調の証しになる。(細野 友司)

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