高梨沙羅、54勝お預けも平昌へ「もう不安要素はない」

スポーツ報知
3位となった高梨沙羅は、ファンの前で花束を手に笑顔を見せた(カメラ・相川 和寛)

◆ノルディックスキー・ジャンプ女子W杯札幌大会第1日(13日、札幌・宮の森ジャンプ場)

 個人第5戦(HS100メートル、K点90メートル)が行われ、昨季個人総合女王の高梨沙羅(21)=クラレ=は93メートル、93メートルの合計238・2点で3位。今季3度目の表彰台に立ったが、王手をかけていたW杯男女歴代単独最多の54勝目は逃した。伊藤有希(23)=土屋ホーム=が93・5メートル、91・5メートルの237・3点で4位。マーレン・ルンビ(ノルウェー)が95・5メートル、93・5メートルの合計252・9点で今季3勝目を挙げ、今季個人総合争いで単独トップに立った。 沙羅の声は弾んでいた。3位の表彰台でも、柔らかな笑顔で手を振っていた。K点越えの93メートルを2本そろえても、今季3勝目のルンビ、2位のアルトハウス(ドイツ)に阻まれ、男子のシュリーレンツァウアー(オーストリア)を超えるW杯単独最多54勝目が手に入らない。それでも「上に強い選手がいると、今の実力じゃ戦えないと分かる。本当にお強い2トップが君臨されているけど、この壁を越えたらどんなにうれしいかとワクワクする」と笑った。2年前のW杯札幌大会では、海外勢に「アンドロイド(人造人間)みたい」とまで言わせた絶対女王。簡単に勝たせてもらえない現状が、逆に楽しい。

 平昌五輪まで1か月を切り、自己ワーストタイのW杯6戦連続未勝利。ビッグジャンプに足りない部分が分かっているからこそ、余裕を持てる。「(空中で)板が跳ね上がり、(空気抵抗を受けて)ブレーキになっている。カンテ(踏み切り台)に力が当たりつつはあるけど、まだ完全に伝え切れていない」と分析。問題点は、あぶり出せている。

 沙羅を担当する牧野講平トレーナー(38)は「彼女は天才的な運動能力があるわけではない。もしかしたら他のスポーツでは大成できなかったかもしれない」と言う。では、なぜジャンプでW杯53勝も積めたのか―。「(身長152センチと)体が小さいけど、器用で体の微細なコントロールができる。普通の人は(頭で)分かってもできないことが、彼女にはできる」と牧野トレーナーはうなる。平昌にピークを置く今季。沙羅が天性の調整力を発揮すれば、十分課題は対処できる。

 心残りが1つ。13日は父でコーチの寛也さん(50)の誕生日。「勝って試合で使った手袋をプレゼントする予定だったのに、どうするか考え直さないと」と残念がった。節目の1勝で祝うことはできなかったが、平昌五輪の金メダルこそ最高の贈り物だ。W杯は14日に同会場で個人第6戦が行われ、次週は蔵王大会(19~21日)も控える。「まだ伸びしろはある。ハングリー精神を忘れずに戦っていきたい」。沙羅の完璧は、まだ先にある。(細野 友司)

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