“英断”が女王・高木美帆を誕生させた

スポーツ報知
高木姉妹に応援メッセージを送る新保さん

 スピードスケート女子中長距離のエースで、メダル獲得の期待がかかる高木美帆(23)=日体大助手、帯広南商高出=。その高木の素質を小学生の頃から見いだし、「飛躍への力」となる“チャンス”と言葉を送り続けてきたのは、北海道スケート連盟専務理事、札幌スケート連盟会長の新保(しんぽ)実さん(78)だ。

 ひとつの“英断”が未来の女王を誕生させた。新保さんと高木美の出会いは、高木美が小学6年生だった2007年2月の北海道選手権(苫小牧)。4種目の合計得点で争われる同大会は原則、出場できるのは中学生以上だった。だが、道連盟スピード委員長だった新保さんのところに、高木美の出場要望が寄せられた。「(小学生で)素晴らしい素材(がいる)。オープン参加で滑る機会を与えてほしい」

 1998年の長野五輪でスターターも務めた新保さんは、高木美の滑りをチェック。「重心のぶれないバランスの良さ、ムダのないスケーティングは、小学生離れしていた」と驚き、『特例』で、3種目へのオープン参加を認めた。その期待に、高木美も入賞圏の滑りを披露。同時に大きな自信をつかんだ。冬・夏7度の五輪出場を果たした橋本聖子・日本スケート連盟会長(53)の小学生時代も知る新保さんは「将来は、橋本さんに負けない選手になると直感した」という。

 スケートに加え、陸上、サッカー、ヒップホップダンスなどで培われた高木美の運動能力、バランス感覚を知った新保さん。今度は、ホープが進学した中学校の指導者に要望した。「技術などいじり過ぎず、自然体で、彼女の良さを伸ばしてほしい」。新保さんを始め、指導者らは高木美の意志を尊重。中学3年で迎えた2010年バンクーバー五輪で、日本スピード史上最年少の代表につながった。同五輪では、日本スケート連盟スピード委員長としてサポートした。4年後のソチ五輪で代表を逃した時には「今の取り組みでいい。必ず上昇できる」と励まし続けた。

 新保さんは12年秋に脳梗塞を患ったが、翌年の冬季国体で現場復帰した。その会場には、高木美が一緒に出場した姉・菜那、兄・大輔さんと見舞いに訪れ、今度は新保さんが元気づけられたという。高木美は平昌五輪には菜那とともに出場する。「今回の姉妹五輪代表は感慨深い。他の道産子代表と共に『平常心』で、メダルを目指したほしい」と応援メッセージを送った。(小林 聖孝)

 ◆新保 実(しんぽ・みのる)1939年4月29日、札幌市生まれ。78歳。札幌商業高校(現・北海学園札幌)出。スケートは高校1年から始めた。それまでは野球選手。1500メートルで高校総体入賞。弟の鋭(さとし)さん(故人)も元スケート選手で、1964年インスブルック冬季五輪代表。現在、札幌市内でうなぎ店「志んぼ」を経営。

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