「待って、待って、待って!」で減速も2位突破!団体追い抜き、スタート出遅れも五輪新の蘭に0秒48差

スポーツ報知
スタート直後、佐藤(手前から2人目)の声に振り向きスピードを緩めた高木美(手前、後方は高木菜=カメラ・酒井 悠一)

◆平昌五輪第11日 ▽スピードスケート女子団体追い抜き1回戦(19日、江陵オーバル)

 女子団体追い抜き1回戦が行われ、優勝候補の日本は高木美帆(23)=日体大助手=、佐藤綾乃(21)=高崎健康福祉大=、高木菜那(25)=日本電産サンキョー=で臨み、2分56秒09の2位で準決勝に進んだ。スタート直後に佐藤が出遅れるアクシデントがあったが、五輪新記録で1位突破したオランダとは0秒48差だった。21日の準決勝は2分59秒02で3位のカナダと対戦する。

 磨き上げた連係で世界記録も保持する日本が、初戦でヒヤリとさせられた。号砲から7秒過ぎ、「待って、待って、待って!」。先頭の高木美が後方からの呼びかけに一瞬足を止め、体を起こして減速。そこから隊列を整え直して再加速したが、出遅れが響いて前半はスピードに乗れず、2分56秒09の2位。先に滑り、五輪新記録を出したオランダに0秒48届かなかった。

 声の主は佐藤だった。試合後、「出だしはほとんど私のミス。スタートで2、3歩“抜けて”しまった」と告白。佐藤の靴の刃が氷をとらえきれず、勢いよく滑り出した高木美の背中が遠ざかり、慌てて叫んだ。今季、団体追い抜きのメンバーに定着。10日の3000メートルも8位入賞と成長著しい21歳は「追いつくまでに時間がかかって、思うようにスピードに乗ることができなかった」と反省しきりだった。

 ただ、序盤の手痛いミスがあったとはいえ、金メダル大本命の力は見せた。前半の3周はオランダに後れを取ったが、スムーズな先頭交代で巻き返し、後半の3周のラップタイムでは上回った。高木菜は「最後まで(1周)28秒でキープできたのは日本の強み。最初のミスで焦らずにちゃんとスピードを作っていけたので、次につなげられる」と前を向いた。

 ミスさえなければと思わせる展開だが、楽観もしていない。今回と同じ布陣で臨んだ昨年11月のW杯で当時の世界記録の2分55秒77をマークしたが、前回女王のオランダは、それを0秒16上回ってきた。今大会の金メダリストのブストらを擁する個の力は圧倒的だ。個人種目で争った高木美は「あのタイムは自分たちも出せると思えているけど、向こうが本番に強いことを忘れてはいけない」と表情を引き締める。

 日本も今季のW杯で3戦とも世界新をたたき出してきた。メダルなしに終わった14年ソチ五輪後、ナショナルチームを結成。所属の垣根を越えて有力選手を集め、重点強化種目として長い時間をかけて連係と戦術を成熟させてきた。

 準決勝の相手はカナダに決まったが、デビット・コーチは「カナダと(4位)米国のどちらでも良かった」と自信を見せる。日本勢で冬季初の1大会「金銀銅」を狙う高木美も「団体追い抜きにかけてきた時間は、他のどの国よりも多い。過信とはならずに自信を持って次のレースに行くだけ」ときっぱり。ミスも教訓に変え、金メダルをつかみにいく。(林 直史)

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