宮原知子、“羽生魂”で「やっと75点が出せた」23日フリーへ「全てを出したい」

スポーツ報知
SPの演技をする宮原。フリーで4位からメダルを狙う(カメラ・酒井 悠一)

◆平昌五輪第13日 ▽フィギュアスケート女子SP(21日、江陵アイスアリーナ)

 女子ショートプログラム(SP)は宮原知子(19)=関大=が75・94点で4位、坂本花織(17)=シスメックス=が73・18点で5位。男子で連覇した羽生結弦(23)=ANA=の「日本魂」に力をもらい、そろって自己ベストを更新してメダル圏内につけた。アリーナ・ザギトワ(15)=OAR=が82・92点の世界最高で首位に立ち、世界選手権連覇中のエフゲニア・メドベージェワ(18)=OAR=は自己最高の81・61点で2位。フリーは23日に行われる。

 宮原は祈る思いで得点を待った。「70点いってくれ」。自己ベストを1・3点更新する75・94点の得点が表示されると、緊張した表情がほぐれた。「やっと75点が出せた」。3位のオズモンドに2・93点差。メダル圏内でSPを終えた。

 11日の団体戦で回転不足を取られたルッツ―トウループの連続3回転は勇気を持って踏み切った。「6分間練習ですごく良かったので、そのイメージを持ちながらグッて跳んだ」。回転不足を克服した魔法の言葉は「グッ! グー グッ! バッ!」だった。団体ではルッツを降りた時に、次のトウループへ跳び急いでしまった。この1週間は出水慎一トレーナーとともに、タメをつくることを意識してきた。

 故障明けの羽生が4か月ぶりの実戦で見せた魂の滑りに、「自分も強いスケートがしたい」と力をもらった。昨年1月に左股関節の疲労骨折が判明。治りかけた昨夏に左足を捻挫し、右股関節の骨挫傷にも見舞われた。氷に乗れない時期のつらさ、取り戻すことの大変さは誰よりも理解できる。浜田美栄コーチから「羽生くんに日本魂を見せてもらった。羽生くんを見習おう」と励まされた。

 小学1年から指導する浜田コーチは「不器用。何をするにも時間がかかる」と評する。1か月程度で跳べる1回転半ジャンプの習得に1年近くかかった。宮原も「運動神経は悪い。ボールを使うのは何でも本当にダメ」と自覚している。バレーボールは向かってきた球を全て空振り。テニスではラケットの面を上に向かせたまま水平に振るという“暴挙”に出たこともあった。

 他の選手が「マネできない」と驚く努力を積み重ねて成長。伸びのある滑りが魅力のソチ五輪女子銅メダルのカロリーナ・コストナーに、「あなたのスケーティングは好き」と言われる武器を手に入れた。フリーは表彰台が狙える位置で迎える。「そうできれば一番うれしいけど、それよりも今まで頑張ってきた、努力してきたことを全て出したい」。フィギュアスケートを続ける理由は一つ。見ている人に感動を伝える滑りをすること。その思いを「蝶々夫人」に込める。(高木 恵)

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