女子団体追い抜き、ソチ惨敗から科学データで頂点へ…天井カメラ活用し徹底的に無駄削る

スポーツ報知
優勝を決め、フラワーセレモニーで壇上に上る女子チームパシュート(左から)菊池彩花、佐藤綾乃、高木美帆、高木菜那

◆平昌五輪第13日 ▽スピードスケート女子団体追い抜き決勝(21日、江陵オーバル)

 女子団体追い抜きのメダル獲得に大きな役割を果たしたのが「ナショナルチーム」だ。メダルなしに終わった14年ソチ五輪後に発足させた狙いと強化の道を、日本スケート連盟のスピード強化部長で今大会の日本代表監督を務める湯田淳氏(45)に聞いた。(林 直史)

 湯田氏はメダルゼロの惨敗からの再建を託され、14年4月に強化部長に就任した。ソチには科学委員長として帯同。科学分析の観点から最も可能性を感じたのが団体追い抜きだった。

 女子は1500メートルが22位、25位、31位、32位と散々だったが、その4人で組んだ団体追い抜きは4位。「その状態で4位までいく。個の力を伸ばせばメダルに間違いなく手が届く。個の力を伸ばし戦術や戦略を磨くには、散って練習するより集まった方がどう考えたっていい」と、ナショナルチーム構想の実現へ動き出した。

 ただ、これまで日本スケート界の強化は実業団に頼る部分が大きかった。反対意見も多かったが「自分が関わる選手だけじゃなく、日本が金メダルを取り続けていくことに意識を向けてほしい」と説得に回った。初年度は16人の選手で発足。2年目にはスケート大国のオランダからヨハン・デビット中長距離ヘッドコーチ(38)を招いた。「コーチング哲学にいい印象を持った。選手をどうしたら速くできるか。その欲求がすごく強かった」。データに基づいた厳しい指導のもと、高木美帆らが成長した。

 女子団体追い抜きは、3人が空気抵抗の大きい先頭を入れ替わりながら6周(約2400メートル)を滑る。1年の半分以上も合宿を行い、長野市エムウエーブの天井に15メートル間隔で28台設置されているカメラも活用した。区間ごとのタイムと滑走軌跡を測り、先頭交代やコース取りの無駄を徹底的に減らす戦術を練った。

 先頭交代は1度につき、平均で0・2秒ほどのロスがある。ソチ五輪は5度だったが昨季は4度、今季は3度に減らした。昨年12月のW杯ではエースの高木美が先頭を引っ張る距離を3周から3・5周に増やし、全員が足を使い切る新作戦にも挑戦。五輪代表の選考基準は最初に団体追い抜きのメンバーから選ぶ形に変えた。今季は世界新記録を3度も更新。4年間の執念が、メダルにつながった。

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