メドベージェワの氷上の涙で思い出す…浅田真央さんのソチ五輪「伝説の4分間」

スポーツ報知

 滑り終えた瞬間、大きな瞳から涙があふれた。ショートプログラム(SP)2位につけた世界選手権2連覇中のエフゲニア・メドベージェワ(18)=OAR=。フリーで「アンナ・カレーニナ」の楽曲に乗せ、後半に3回転サルコーと3回転トウループの連続ジャンプを跳ぶなど高難度の構成を滑りきり、指先や表情まで洗練された表現力でも魅せた。演技後はリンクで泣き出し、得点を待つキス・アンド・クライで銀メダルが決まるとまた涙。これまで抑えていた感情があふれ出したのだろう。

 メドベージェワの涙を見て、前回ソチ五輪の現場取材で目の当たりにした感動的な光景を思い出した。バンクーバー五輪銀メダルの浅田真央さん(27)がフリーを滑り終えた後、氷上で流した涙だ。真央さんはSPでトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)が回転不足になって転倒するなど、すべてのジャンプを失敗。まさかの16位と出遅れた。まさに会場の誰もが信じられなかった“悪夢”だった。

 それでも翌日のフリーで“奇跡”を起こした。冒頭で3回転半ジャンプを成功させると、SPの失敗がうそのように次々とジャンプを決めた。全6種類の3回転ジャンプを取り入れ、連続ジャンプも含めて8度の3回転を着氷。情感を込めたステップで魅了し、スケート人生を表現したプログラムを完遂すると、リンク上で天を仰いで涙。メダルこそ逃したものの、フリーは142・71点の自己ベストをマーク。合計198・22点で6位と巻き返し、世界中が涙したフリーは「伝説の4分間」として人々の記憶に刻み込まれた。

 真央さんはソチのフリーを終えた後、涙の理由について「(SPの)悔しさも少しはあったけど、自分が目指してきた演技ができた。うれし泣きと笑顔と」と語った。悔しさ、うれしさ、そして戦いがやっと終わったという大きな重圧からの解放…。様々な思いが胸に去来しての涙だった。

 メドベージェワも金メダルの大本命として迎えた今大会。氷上では完璧な姿を見せた18歳も、心の中では様々な感情と戦っていたことだろう。涙で締めくくった氷上の舞は、真央さんのフリーと同様、人々の記憶に残る4分間となった。(記者コラム・飯塚久美子)

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