スケート連盟、スーパー中学生育成プロジェクトで「第2の小平&美帆」生む

スポーツ報知
金メダルを手に笑顔を見せる小平奈緒(カメラ・酒井 悠一)

 日本スケート連盟が平昌五輪後、スピードスケートの“スーパー中学生”育成プロジェクトに乗り出すことが24日、分かった。平昌で金を含む複数のメダルを獲得した小平奈緒(31)=相沢病院=、高木美帆(23)=日体大助手=は、ともに中学生時代から逸材として注目されていた。札幌市が招致を目指す2026年冬季五輪以降を見据え、各地の小学生年代の有望選手と指導者を強化。“神童”たちを育て上げ、「第2の小平、美帆」の誕生を目指していく。

Wエースも中学で脚光 空前のメダルラッシュを一過性で終わらせない。4年前の14年ソチ五輪ではメダルゼロに終わったスピードスケートは、平昌五輪で復活し大活躍。今回はナショナルチームの新設など、有力選手に集中投資した強化が成功を収めた形になったが、連盟関係者は将来を見据え、早くも危機感をにじませた。

 「目先の結果にとらわれていては、また10年後、20年後に冬の時代が来る。少子化もあり、“スーパー中学生”と言われるような選手が極端に減って、ここ数年は見当たらない。このままではトップの強化もしぼんでいく。育成を充実し、長期的な視野で強い日本を継続していかなければいけない」

 日本の躍進を支えた小平、高木美という女子のWエースは中学生の時から脚光を浴びてきた。小平は2年時の全日本ジュニア選手権で高校生たちを破った史上初の中学生女王。高木美は15歳でバンクーバー五輪に出場した。逸材がその後の継続的な努力や指導体制の強化で花開いた形だ。さらに2人が世界で結果を残す姿を間近で見た周囲の選手が意識を高め、タイムを伸ばす好循環も生んだ。

 この流れを途切れさせないためにも、“第2の小平&美帆”の育成は急務だ。今後、連盟は小学生の強化に本腰を入れる。足がかりとして2年前に「ノービス強化選手」制度を創設。小学4、5年生から10人程度を選抜し、技術や栄養学を学ぶ2泊3日の研修合宿を実施しているが、全国大会の成績優秀者が対象で北海道など競技が盛んな地域の出身者が大勢を占めるという偏りがあった。まずはこの枠組みを拡大する。地区大会の結果や推薦などで各地方の“神童”をピックアップできるシステムを作り、シニアのように長期合宿はしないが、小学生版「ナショナルチーム」を編成していく方針だ。

 連盟が講習指導者育成 

 さらにジュニアやノービスの強化選手を抱える指導者には日本体育協会の指導者資格の取得を義務付け、「強化コーチ」に認定することも検討している。特に小学生年代は育成は個人の熱意に支えられていた部分が大きかったが、連盟から定期的にナショナルチームのコーチ陣らによる講習や情報交換の場を提供。トップから育成年代まで共通理念を持って強化に取り組める環境を整える。関係者は「子供たちには上を目指すモチベーションに、指導者にはトップの選手を育てていかなければいけないという意識につながれば」と期待する。

 平昌五輪のスピードスケート快進撃で、小平や高木美に憧れて、競技に興味を持った子供たちも多いはず。育成制度の中で次の“スーパー中学生”に成長し、やがて世界にはばたく、こうした理想的な未来に向け、最大の好機を逃さず、布石を打つ。

 ◆小平と高木美のスーパー中学生時代 
 ▼小平 01年の中学2年時の全日本ジュニア(スプリント部門)で、高校生だった吉井小百合を破り史上初の中学生王者に。500メートルの中学記録も樹立した。
 ▼高木美 中学2年だった09年1月の全日本ジュニアで3種目を制覇し、2月の世界ジュニア選手権・総合4位。中学3年になると11月の真駒内選抜・女子500メートルで2回合計の中学日本新記録樹立。10年2月のバンクーバー五輪では史上初の中学生代表に。幕別町立札内中サッカー部にも所属し、08年12月に女子ユース世代の日本代表候補キャンプに参加したことがある。

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