成田緑夢「夢みたい」金メダル獲得!新競技の初代王者

スポーツ報知

◆平昌パラリンピック第8日 ▽スノーボード 男子バンクドスラローム下肢障害(16日・旌善アルペンセンター)

 男子バンクドスラローム下肢障害で、今大会スノーボードクロス銅メダルの成田緑夢(ぐりむ、24)=近畿医療専門学校=が金メダルを獲得した。

 1回目に50秒17、2回目は49秒61、3回目は48秒68とタイムを上げ続け、1回目から最後まで首位を譲らなかった。今大会日本勢の金メダルはアルペンスキー女子大回転の村岡桃佳(21)=早大=に続き2個目。パラアイスホッケーの日本は7、8位決定戦でスウェーデンに敗れ、最下位の8位だった。

 成田は心から言い切れた。「全てに挑戦できた。最高の気分」。観客席に大きく手を振る姿は、誇らしさに満ちていた。今大会から採用されたバンクドスラロームの初代王者。ともに06年トリノ五輪スノーボード代表の兄・童夢、姉・今井メロも願ってやまなかった世界の頂点に立った。夜の授与式では金メダルを首にかけられ「夢みたい。日本代表として世界の舞台で日本の国旗を見せ、国歌を流すことができて、すごくうれしい」と喜びをかみしめた。

 3回のベストタイムで順位を争い、1回目に50秒17で首位発進。予想以上に凍った斜面を「小回りの利く車」のイメージで慎重に臨んだ。「意外と回れるな」。手応えは確か。2回目は「エンジンの大きい車に乗り換え、1段ギアを上げた」。首位を守ろうとは全く思わなかった。まひする左脚が前になるため苦手で、12日のスノーボードクロス準決勝で転倒した左カーブも、リスク覚悟で最短距離を攻めた。覚悟は数字に出た。最終3回目は、1回目より1秒49もタイムを縮めてライバルを抑えた。「完璧だった。『よくやった』と言いたい」と自分を褒めた。

 13年4月、トランポリンの練習中の事故で左膝下がまひする障害を負ってから、挑戦の連続だった。トランポリンやフリースタイルスキーで五輪を目指し、鍛え上げた体は別人のもののようだった。足首が動かず、意識と逆方向に進んでしまい「竹馬に乗っている気分」と落ち込んだこともあった。それでも現状を受け入れ、新たな体の使い方を追求。動く部位を最大限生かそうと発想を転換した。フォームの手の位置をセンチ単位で変え、力の入らない左脚は固定力の高いブーツを履くなど試行錯誤を重ね、持ち前の高い身体能力が輝きを取り戻した。

 初代表で2つのメダルを手にした平昌は、文句なしに最高の結果だった。「最終目標は夢や感動、希望、勇気を与えられるすてきなアスリート」。パラ世界一の勲章を手にした24歳には、生涯をかけて追求し続ける理想像がある。

 ◆成田 緑夢(なりた・ぐりむ)1994年2月1日、大阪市生まれ。24歳。1歳からスノーボードを始め、4歳だった98年長野五輪ではデモンストレーターを務めた。トランポリンでは上宮高(大阪)時代の2010年全国高校選手権優勝。13年にはフリースタイルスキーのハーフパイプで世界ジュニア選手権優勝。173センチ、65キロ。

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