菊池彩花、涙の現役引退報告…後輩“彩花魂”継承誓う 押切美沙紀、一生懸命な背中見てきた
富士急行スケート部の創部50周年祝賀会と3月の世界選手権に出場した同社女子カーリング部の報告会が8日、富士吉田市内で行われた。席上、同社所属で平昌五輪スピードスケート女子団体追い抜き金メダルに貢献した菊池彩花(30)が現役引退を表明。後輩たちは菊池をねぎらうとともに、奮起を誓った。女子カーリング部は、パシフィックアジア選手権(今秋、開催地未定)の日本代表切符をかけて、平昌五輪銅のLS北見と5月に対戦。ライバル対決での必勝を目指す。
こみ上げるものを抑えきれなかった。「今季をもって現役を引退させていただきます。選手生活を支えて下さった会社やスケート連盟をはじめとした皆さまに、深く感謝いたします」。菊池は約400人のスケート部OB・OGや関係者が見守る中、時折、涙で声を詰まらせながら引退を報告した。
スケート部を長らく引っ張ってきた菊池の決断に、後輩たちは、改めて存在の大きさを認識した様子だった。2大会連続出場となった平昌五輪で女子5000メートル9位の押切美沙紀(25)は最近、正式に(引退を)聞いたという。「寂しいが、(指導者として)頑張ってもらえたら」とエール。帝京三高出身の松岡芙蓉(26)は「うまくいかず泣いているときに、すぐ声をかけてくれた。絶対にいいコーチ、監督になれると思う」と語った。
菊池はもちろん、2人にとっても大きな節目となった様子だ。松岡は進退の明言を避けた一方、押切は現役続行を宣言。「彩花さんは、どんなトレーニングでもひとつひとつ、一生懸命こなしていた。自分もまねしていきたい」と誓った。
「富士急スケート部とは?」という問いに、菊池は「今の自分を作ってくれたもの」と答えた。「伝統あるスケート部でこれからも頑張る」と押切。県勢初の金メダリストという偉業を成し遂げた先輩の“魂”を引き継ぎ、さらにチームを盛り上げる。(三須 慶太)
◆菊池に聞く
菊池は祝賀会後の引退会見で、笑顔も見せながら現在の心境を語った。
―引退を決めた時期と理由は?
「競技をする中で、平昌五輪は何となく節目だと考えていましたが、最終的に決めたのは6日です。気持ちとしてやりきったのが大きかった」
―一番の思い出は?
「やはり、今シーズンの平昌五輪での金メダル獲得と、世界選手権でたくさんの観客の中で滑れたことです」
―引退を表明して思うことは?
「まだまだできるよ、と言う方もたくさんいて、ありがたいですが、自分自身では、学んできたことや経験を今後、後輩たちに伝えていけるように頑張っていきたいので、温かく見守っていただけたら」
―理想とする指導者像は?
「成績だけ出せればいいとは思っていません。選手生活は人生の中でも一瞬。その時もその先も、人として尊敬されるような人間を育てていきたいと考えています」
―自身にとってスピードスケートとは?
「ありきたりですが、人生ですね」
◆菊池 彩花(きくち・あやか)1987年6月28日、長野・南相木村生まれ。30歳。5人姉妹の次女で、母・初恵さんの影響で幼少期からスケートを始めた。佐久長聖高(長野)から2006年に富士急入社。五輪は14年ソチ大会の女子団体追い抜きで4位、1500メートルで31位。18年平昌大会の女子団体追い抜きで金メダル、1500メートルで16位、3000メートルで19位。170センチ、61キロ。