新国立競技場の命名権売却しても970億円不足

2015年6月30日6時0分  スポーツ報知

 2020年東京五輪・パラリンピックに向けて、主要組織のトップが重要事項を協議する調整会議が29日、行われた。出席した下村博文文部科学相(61)は会議終了後、主会場となる新国立競技場の建設にかかる総工費2520億円の財源として、「競技場の命名権(ネーミングライツ)の売却を検討する」との考えを示した。財源確保に苦しむ中、民間に「新国立」の金看板を売却するという突然のトップの発言に、省内から戸惑いの声が漏れた。

 下村文科相は、新国立競技場の建設費が昨年5月時点から約900億円上積みした2520億円になることを正式に発表した。会議では、競技場の完成が当初の予定より2か月遅れ、19年5月になることも明らかにした。

 文科省は、これまで建設費の財源として、スポーツ振興くじ「toto」の2年分の年間売り上げの5%となる約110億円と国費約390億円を確保した。今後、選手強化などのために使う「スポーツ振興基金」の政府出資分の一部を切り崩すなどして充当するつもりだが、それでも財源の不足分を補えない。

 財源のメドが立たない中、下村文科相はこの日突然、「命名権の販売を検討している」と明言。国立の施設で命名権売却は極めて異例だが「整備費2520億円はやはり高い。民間からの寄付を含め、できたら200億円くらいは集めたい」と話した。「新国立」の金看板を民間に売ってしまえば、1958年に命名されてからアスリートの憧れだった「国立競技場」の名前が消滅する。裏を返せば、それほど財源確保に苦心している表れで下村氏の発案は、まさに苦肉の策と言える。

 ただ、実現には難航が予想される。突然のトップの発言に文科省の担当者は「あくまで一つの案ということで、これから情報収集する」と困惑した。過去に日本で命名権を最も高く取得したのは、今年2月末までに年間5億円で契約した「福岡ヤフオク!ドーム」で、200億円は破格だ。

 加えて、日本オリンピック委員会によると「大会期間中はオリンピック憲章に抵触するため、企業名の入った競技場名は使うことができない」。五輪の舞台で、世界に企業名をアピールできないことになる。異常な高額と命名権を取得しても企業にとって最大のPRとなる五輪で名乗れないとなれば、名乗り出る企業が現れるかは疑問だ。契約期間など詳細も不明で、多額の寄付をした人のネームプレートを競技場の壁面に設置することも検討している。

 苦境に陥る財源確保。東京都に負担を要請している約500億円も了承が得られていない。調整会議に出席した舛添要一都知事は「都民が納得できる説明をまだ受けていないので、これからの議論になる」とした。

 たとえ命名権が200億円で売れたとしても、財源の不足分は約970億円。総工費には、大会後に設置する開閉式の屋根の費用は含まれていないことも発覚。建築家からは「400億円程度かかる」との見方もあり、最終的なコストは増大する見通しで、今後、批判の声がさらに上がりそうだ。

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