【BOOKセレクト】東出昌大が心打たれた「司馬遼太郎作品」…12日で没後20年

2016年2月11日15時0分  スポーツ報知

 「竜馬がゆく」「坂の上の雲」など数々の歴史小説で知られる司馬遼太郎さん(享年72)が亡くなってから、12日で20年となる。司馬さんは戦国時代や幕末など激動の日本を描き、その壮大な世界観は映画、ドラマにもなり、今も多くの人に読み継がれている。次世代の愛読者で「司馬さんが最も好きな作家の一人」という俳優・東出昌大(28)が、このほどスポーツ報知のインタビューに応じ、自身が選ぶ「司馬作品ベスト3」を挙げ、その魅力を語った。

 東出が歴史小説を初めて読んだのは19歳の頃だった。

 「当時、父が肝臓がんになり余命1年と宣告されました。その時になって父のことを全然知らないなと思ったんです。父の書棚に司馬遼太郎や藤沢周平らの本がたくさんあったので『何が面白い』と聞くと、父が喜んで『これを読め』と言って差し出したのが『峠』だった。抜群に読みやすくてのめり込みました」

 部屋の壁一面に、置かれた歴史小説の単行本。むさぼるように読み始め、父親との会話も増えた。司馬作品は30作以上を読破した。

 「実は学校の歴史の授業が大嫌いでした。好きな科目は国語、美術、体育。でも司馬さんの本を読んでいくうちに歴史に興味を持つようになった。今では仕事で地方に行くと、城に立ち寄ってしまう」

 読書好きだった東出にとって、司馬さんは最も好きな作家の一人となった。好きな作品を聞くと、1位が「峠」、2位は「竜馬がゆく」、3位に「国盗り物語」を挙げた。

 「峠は、幕末の越後長岡藩(現在の新潟県)で家老を務めた河井継之助が主人公。河井は明治新政府中心の世の中に変わろうとする時代に、負けると知りながらも抗(あらが)い、旧幕府側につき戦った人物。まず、その信念の強さに驚きました。遅咲きで誰もが『河井は野に埋もれる』と思っていたが、最後まで国の心配をして腐ることはなかった。一方で私生活は破天荒。吉原が火事になったら、書生の身ながら、国元に妻がいるのに、吉原のなじみの女性の元に駆け付ける。でも司馬さんは、この行動を河井が信奉した陽明学の『考えるより先に行動する』という考えによるものと解釈した。お家の危機となれば、早駕籠(はやかご)に三日三晩乗って駆け付けすぐ政務につく。乗り心地の悪い早駕籠で揺られ続けながら三日三晩なんて普通の人には絶対できない。精神的、肉体的に限界まで努力した生きざまに心打たれました」

 「竜馬がゆく」は、世間の坂本龍馬像を作り上げたといえる国民的小説。剣道3段の東出には、剣豪たちへの格別な思いもある。

 「(下級武士だった)こういう人でも世の中を変えることができるんだと、ヒロイズムに酔える。自分は今はちっぽけだけど、志を持って生きていけば間違った方向に行かないと思わせてくれる。龍馬は本当はなぎなたが強かったらしいのですが、剣術で一芸を極めた強さにも魅力を感じます。岡田以蔵らの剣の強さの話が出ると、さらに強い人がいるのかと驚くばかり。昔の人への尊敬の念が深まりました」

 「国盗り物語」を読んだのは21歳の頃。戦国時代に魅了された。

 「斎藤道三編と織田信長編の2部構成というのが珍しい。『美濃のマムシ』と呼ばれた道三が、一介の油売りから成り上がる様がドラマチックで面白い。道三と信長、そして明智光秀の不思議な関係が描かれていて、戦国時代に興味がある人にはオススメです」

 今後、演じてみたい歴史上の人物はいるか。

 「どんな描かれ方をされているかが一番大事。脚本にもよりますが、信長か光秀、江戸城の無血開城の立役者の山岡鉄舟ですね。剣豪だった鉄舟は、僕と同じくらいの身長約188センチだったと聞いているので、面白そうです。信長は最近、金切り声だったという説もある。史実はどんどん調査が進んで塗り替えられるので、そこも難しい。秀吉? ちょっとイメージが湧かないですね(笑い)」

 “歴女”としても知られる妻で女優の杏は、新選組副長・土方歳三の生涯を描いた「燃えよ剣」が大好きだという。

 「(結婚前に)一緒に仕事をするようになって時間がたった頃『歴史上の人物で誰が好きですか』と聞くと、彼女は『(江戸中期の本草学者、蘭学者、作家、画家の)平賀源内と(新選組の)永倉新八』と答えたんです。変わった人だなと思いました」

 歴史について意見が合わず、口論することは…?

 「ないですね(笑い)」

 ◆東出 昌大(ひがしで・まさひろ)1988年2月1日、さいたま市生まれ。28歳。高2で雑誌「メンズノンノ」専属モデルオーディションでグランプリを受賞。2012年に映画「桐島、部活やめるってよ」で俳優デビューし、日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞。13年、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で杏と共演し、15年元日に結婚。特技は剣道、バスケットボール。身長189センチ。血液型A。

 ◆司馬 遼太郎(しば・りょうたろう)1923年8月7日、大阪府大阪市生まれ。享年72。大阪外国語学校(現在の阪大外国語学部)蒙古語学科卒業。太平洋戦争中、学徒出陣で陸軍入り。終戦後、産経新聞の記者となり、在職中からエッセイや小説を書き始める。60年、長編歴史小説「梟の城」で直木賞受賞。66年に「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。93年に文化勲章受章。司馬史観と呼ばれる自在で明晰(めいせき)な歴史の見方が絶大な信頼を集めた。96年2月12日、腹部大動脈瘤(りゅう)破裂により死去。

 【新刊レビュー】

 ▼「孤狼の血」(柚月裕子、KADOKAWA、1836円)「このミステリーがすごい!」大賞に輝いた推理作家が描く悪徳警官小説。舞台は暴対法が制定される以前の1988年の広島。金融会社社員の失踪事件をめぐって違法捜査を繰り返す常識外れのマル暴刑事と極道が、プライドを懸けた戦いを繰り広げる。直木賞候補にも挙がった。

 ▼「なぜ私は韓国に勝てたか 朴槿惠政権との500日戦争」(加藤達也、産経新聞出版、1512円)1つのネットコラムをきっかけに韓国・朴大統領への名誉毀損(きそん)罪でソウル中央地検に起訴された産経新聞前ソウル支局長が、2015年末に「無罪判決」を勝ち取るまでの“暗黒裁判”の裏側をすべてつづった闘争記。韓国社会の病理が垣間見える一冊だ。

 ▼「尖閣ゲーム」(青木俊、幻冬舎、1620円)テレビ東京の北京支局長などを経て、2013年に作家として独立した著者が放つ、書き下ろしの大型エンターテインメント小説。オスプレイ墜落、相次ぐ流血事件、燃え上がる反米感情…。読み進めるうちに日本の「今」と重なり、ノンフィクションを読んでいるかのような錯覚に陥る。

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