刑法のご意見番・板倉宏さん亡くなる、83歳

2017年5月2日6時0分  スポーツ報知

 事件や裁判についてのコメントや解説などで知られる刑法学者で日大名誉教授の板倉宏(いたくら・ひろし)さんが4月28日午前6時30分ごろ、肺炎のため神奈川県藤沢市の病院で死去した。83歳だった。40年以上にわたり新聞やテレビなどで法律を一般人でも分かりやすい内容で説明し、お茶の間に支持されていた。

 長男の宏昭さんによると、板倉さんは高齢ということもあり、2年ほど前からはテレビ局へ赴いてスタジオ出演することはなくなっていたという。その後は自宅で取材を受け、ビデオ出演をする形を取っていたが、電話取材なども精力的に受けていた。

 ただ、昨夏ごろに外出中に転倒して骨折。その影響で体を動かすことが少なくなり、体力が低下したことから、最近は施設に入っていたという。先月25日の夕方になって体調を崩し、入院。そのまま帰らぬ人になった。

 板倉さんは東大法学部卒業後に法学博士となり、刑法を専攻。1970年に日大法学部の教授に就任した。コメンテーターとしての活動を始めたのは、70年代の前半から。宏昭さんによると「初めて新聞社から依頼されてコメントを出したのは、チッソの水俣病訴訟に関するものだったと思います」という。

 その後は76年のロッキード事件や81年のロス疑惑など、マスコミで話題の事件の“ウォッチャー”としてテレビのワイドショーなどにも出演するように。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」で激論を交わすこともあった。現在ではワイドショーやバラエティー番組で法律について語る弁護士や法律家が数多くいる中で、そのはしりとして活躍した。

 スポーツ報知をはじめ、さまざまな場所で積極的に意見を発信していったのは「法律は一般市民のためのもの」という強い気持ちがあったから。宏昭さんは「『刑法』というと難しいイメージがあり、よく分からないからと目を向けない人が多い。だから『市民を守るためのもの』ということを知ってもらいたかったんだと思います」。取材の依頼があると24時間365日対応するという姿勢も、その表れだったという。

 量刑などについて問われると、厳しめの回答をする傾向があったが「『被害者の人権が侵されてはいけない』と考えていたのでは」と宏昭さん。特に、企業犯罪に関しては厳しい意見が多く「真相究明には現場レベルではなく、企業全体として捉えないといけないという気持ちが強かったのだと思います」と話した。

 ◇板倉さんが過去に本紙に寄せた主なコメント

 ▼2000年2月 「成田ミイラ化遺体事件」

 カルト集団「ライフスペース」に所属する容疑者が遺体を「生きていた」と主張

 「容疑者が『定説』(集団内の考え方)をいくら説明しても、法廷で争うのは客観的な事実だけ。事件は十分に立証できる」

 ▼01年3月 「埼玉愛犬家殺人事件」

 4人を殺害した被告の夫婦に共に死刑判決

 「被告2人の殺し方もひどければ、互いに罪をなすり付け合う公判の態度もひどい。判決は当然すぎるほど当然なもの」

 ▼05年3月 「西武鉄道事件」

 証券取引法違反の罪で起訴された堤義明氏が1億円で保釈

 「もう少し高くてもいいような気がする。ただ、堤被告の財産は会社のもので、彼自身の財産はあまりないから、と判断したのでは」

 ▼08年2月 「ロス疑惑」

 三浦和義氏がサイパン島で米捜査当局に殺人容疑で逮捕

 「最高裁で無罪が確定しているので日本は身柄を引き渡せず、米国に行かない限り逮捕されなかったはず。ロス市警は諦めてなかったんですね」

 ◆板倉 宏(いたくら・ひろし)1934年1月15日、大阪生まれ。56年、東大法学部を卒業。61年、同大大学院民刑事法科博士課程を修了し、法学博士となる。専攻は刑法。70年、日大法学部教授に就任。日本刑法学会会長、司法試験考査委員などを務める。2009年、日大名誉教授に就任。13年、瑞宝中綬章を受章。

訃報・おくやみ
  • 楽天SocialNewsに投稿!
社会
今日のスポーツ報知(東京版)