西武・森コーチを襲った「劇症型溶連菌感染症」…健康体でも突然発症

2017年7月15日10時0分  スポーツ報知
  • 森慎二さんの選手時代の大きなパネルが添えられた告別式の祭壇

 プロ野球西武の森慎二1軍投手コーチが6月28日、多臓器不全のため、42歳の若さで急死した。25日に体調不良を訴え、即入院。わずか4日で帰らぬ人となった。親族によると、死因は「毒性の強い溶連菌(ようれんきん)への感染による敗血症」だった。若く健康な人を突然死に至らしめることがある「劇症型溶連菌感染症」とは。

 溶連菌とは「溶血性連鎖球菌」の略称。普段から皮膚や粘膜に存在していることも多く、一切症状が出ない“保菌者”もいる。感染すると咽頭炎などを起こすが、抗生剤を服用すれば1~2週間程度で完治する。年齢は問わないものの、学童期の子供に最も多い。

 怖いのは、ごくまれに発症する「劇症型溶連菌感染症」だ。発症すると急速に多臓器不全が進行。ショック状態となって発病から数十時間以内に死に至ることがある。通称“人食いバクテリア”について、東京・えびすハートクリニックの林雅道院長は「1987年に米国で、日本では92年に初めて症例の報告がありました。国内では年200人を超える患者が報告され、約3割の方が3日以内に亡くなっています」と説明する。

 “劇症型”を引き起こす溶連菌と、通常の咽頭炎などをきたす溶連菌は異なると考えられているが、その実態は謎が多い。“劇症型”は子供から大人まで広範囲の年齢層に発症するものの、30歳以上に多いという特徴を示すだけ。免疫不全などの重い基礎疾患を持たない健康体でも突如発病する。発熱以外に手足などに強い痛みと腫れが出ることなども特徴だ。

 患者には抗生剤を投与しつつ、菌が繁殖した壊死(えし)部分を切除する処置が行われるが、病状が悪化するスピードが驚異的に速いため時間との戦いになる。「森さんの場合、処置が間に合わなかったのでしょう。病院で診断がついた時点で腎臓も肝臓も悪く、すぐに菌血症によるショック状態となっていた可能性があります」と林院長。命は取り留めたものの、壊死組織の広がりによっては障害が残るケースもある。

 進行が速いため、早期発見が非常に重要なカギとなる。初期症状は、発熱や喉の痛みなど風邪やインフルエンザに似ている。そのため医師によっては、インフルエンザ検査を行うだけの可能性も。翌日にはかなり病状が悪化するので、再度診察を受けた方がよい。

 「悪寒(強いゾクゾクと感じる症状)のほか、手足が赤みを帯びてズキズキとした強い痛みが伴うようなら“劇症型”感染の疑いがあります」と林院長。「脈が1分間に100を超える、血圧が低下する、発言がおかしくなる、熱が高いのに手足は冷たい、などの症状が出た場合は早急に病院に行ってください。後は、医師が“劇症型”だと気づいてあげられるかどうか」と話している。

 ◆多臓器不全 心臓、肝臓、腎臓、血液系、消化器系、神経系、呼吸器系と生命維持に必要な7つの臓器・系のうち、2つ以上が同時、または連続的に機能不全に陥ること。

 ◆敗血症 細菌、ウイルス、真菌が血液中に入って全身に回り、炎症反応が起きて臓器不全などを伴う病気のこと。菌血症は、血液中に菌がある状態。

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