金正恩氏に相次ぐ“褒め言葉”「不良少年が英雄になった」

スポーツ報知

 27日に行われた南北首脳会談で朝鮮半島の非核化を目指す共同宣言に署名するなど、急速な融和ムードをみせている北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に対し、“褒め言葉”が相次いでいる。

 フィリピンのドゥテルテ大統領は「不良少年が英雄になった」と激賞。芸術家のオノ・ヨーコさんも首脳会談を歓迎した。さらに韓国の文在寅大統領が29日、安倍晋三首相との電話会談で、金氏が日朝対話に意欲をみせていることを明らかにした。和平演出が続く金氏だが、今後の展開次第では再び批判が集中する恐れもありそうだ。

 トランプ大統領から「リトル・ロケットマン」とやゆされるなど世界中から批判を浴びていた金氏が、南北首脳会談を境に、一夜にして「いい男」に“変身”した。

 元ビートルズの夫ジョン・レノンと共に平和活動を続けてきたヨーコさんはツイッターで「ジョンは喜びのあまり宇宙で小躍りしている。世界中の国が握手をするきっかけになってほしい」と、会談が朝鮮半島のみならず世界の平和につながるはずだと歓迎。「一つの世界、一つの人類。今回のことが夫と私が信じてきたことの始まりになるように望む。近くきっと実現する。平和はパワーだ!」との言葉を寄せた。

 また、ミサイル実験を繰り返す金氏を「危険なおもちゃで遊んでいる愚かな人物」と斬り捨てていたドゥテルテ氏は「地域の不良少年だと思われていたが、今や英雄だ。私のアイドルになった」と手のひら返しで称賛。フィリピンが昨年議長国を務めた東南アジア諸国連合(ASEAN)は、北朝鮮を非難する声明を出したが「彼は時の人だ。いつか会えたら祝意を表したい」とまで話した。

 金氏の「和平外交路線」は日本にも拡大しそうだ。文氏はこの日の安倍首相との電話会談で、金氏に対し日本人拉致問題や日朝関係について提起したと説明。金氏が「いつでも日本と対話を行う用意がある」と述べていると安倍氏に伝えた。金氏が拉致問題にどのような反応を示したかは明らかではないが、膠着(こうちゃく)状態が続いていた日朝関係が対話局面に入る可能性が出てきた。

 南北会談で金氏が豊渓里の核実験場を5月中に閉鎖、公開することを表明していたことも明らかに。「融和政策」に大きく傾いている。一方、北朝鮮は日本との公式対話が再開した場合、制裁緩和や植民地支配を巡る「過去の清算」を優先的に求める公算が大きい。日本が最優先課題とする拉致問題について、従来より柔軟な姿勢を示すかは不透明。今後の米朝首脳会談、日朝対話の結果次第では、世界から再びブーイングを浴びる可能性もあり、金氏の実行力に注目が集まりそうだ。

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