東大生協、価値1000万円以上!?大作絵画捨てちゃった…40年以上展示の宇佐美圭司さん作品

スポーツ報知

 東京大学生協は8日、東京・文京区の同大学の中央食堂に展示されていた画家の宇佐美圭司さん(2012年死去)の絵画作品を、食堂改修工事に伴い、昨年9月に廃棄処分としていたことを明らかにした。工事の監修に当たった教授は作品を保存する方向で新たな設置場所を指定していたが、情報が共有されていなかったという。生協は「知識がなく軽率な廃棄の判断となり、深くおわびする」とのコメントを発表した。

 40年以上、東大生や教職員たちに親しまれてきた絵画が、判断ミスで廃棄されてしまった。東京大学生協によると、廃棄処分されたのは縦3・8メートル、横4・8メートルの作品「きずな」。さまざまなポーズを取る人の形が描かれた作品で、宇佐美さんが残した中でも最大規模の大きさだという。1976年に生協創立30周年の記念事業の一環で宇佐美さんに依頼して制作され、生協が所有していた。

 中央食堂は昨年、全面改修を実施。生協は教授が作品の保存場所を指定していたことを把握しておらず、作品を残したまま設計を変更するか、廃棄かの選択をしなければならないと誤認。廃棄の判断をした。生協には「きずな」以外の展示品はなかったという。

 東京大も8日、「本学にも責任がある」と謝罪。「学内に存在する数多くの学術文化資産について、正確な情報共有を徹底したい」とした。

 宇佐美さんは大阪府出身。高校卒業後に上京し、独学で絵画を学んだ。63年に初めての個展を開催した後、米国と欧州に遊学。72年には現代美術の国際展覧会ベネチア・ビエンナーレに参加するなど海外でも活躍。83年に美術文化振興協会賞、89年に日本芸術大賞を受賞。武蔵野美大、京都市立芸大の教授を歴任し、福井県にアトリエを構えた。大きな画面に無数の人を配し、緻密な構成力とスケール感のある画風で知られる。亡くなった2012年まで個展を開催していた。

 宇佐美さんの所属ギャラリーだった南天子画廊(東京都中央区)によると、販売が可能な宇佐美さんのキャンバス画は、2メートル×2メートルの大きさで600万円前後の価格がつくという。「きずな」は依頼制作なので取引価格はない。同画廊の代表、青木康彦さんは「100~200万円の価値のものではないことは確か。そのひとケタ上かもしれない」と話し、「代表的な大作で、極めて残念だ。あまりにも軽々に廃棄されたことに戸惑いを感じている」と残念そうに話した。

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