「サラリーマン川柳」の応募4万7559句、五七五で誰でも世相を詠む人気の理由は

スポーツ報知
23日、東京・日比谷の第一生命で第31回サラリーマン川柳コンクールのベスト10が発表された

 第一生命が主催する「サラリーマン川柳コンクール」(サラ川)のベスト10が23日に発表された。世相を映す鏡として毎年注目され、31回目の今年は「健康志向」「働き方改革」を詠んだ句が目立った。全応募は4万7559句。川柳コンクールは、ほかにも多くの企業、団体の広告キャンペーンとして採用されている。川柳が趣味として根強い人気を誇る理由を全日本川柳協会(大阪)に聞いた。

 全日本川柳協会によると、川柳が多くの人に親しまれているのは「(五・七・五などの)形式だけを守ればいい入りやすさと、さまざまな視点で面白おかしく人を詠むから」だという。流行語などその時代の言葉が自由に使え、季語は不要。俳句で使われる「かな」「けり」などの「切れ字」も重要視されず、「誰でもすぐに始められ、簡単に楽しめますよ」と勧めている。

 同協会には初心者からの問い合わせが多いそうだ。「年配の人が多く、『どこで習えばいいか』という質問には、地域の川柳教室を調べて教えてあげています。(NHK学園、ユーキャンなどの)添削講座で勉強する方法もある」という。「最初は入門書を読んで新聞に投句する程度でも、自分の句が載ったりすると『もっとうまくなりたい』という欲が出てくる。そういう人はより深く学べる川柳社(愛好家が集まる会)に通います」。川柳社は定期的に句会を開き、会員同士で感想を述べ合うことで上達を促す。「同じ趣味を持つ人が交流することも年配の方にとって魅力。川柳にもいろいろ流派がありますが、“仲がいい”です。ある川柳社の会員が、別の社の句会に参加することもある。作品を競うのでなく、楽しもうという雰囲気がありますね」と同協会は説明する。

 ネットを利用して若い世代へ広めようとする動きもある。90余年の歴史がある川柳塔社では毎月、ホームページ(HP)で作品を募集するweb句会を開いて投句を呼び掛けている。川柳塔社は会の原点でもある1924年創刊の月刊「川柳雑誌」の電子化事業を行ったり、30~40代の若手同人のリレーエッセーをHPに掲載するなど川柳普及、啓発活動にネットを積極的に活用している。

 全日本川柳協会もHPに小中学生対象の入門ページを設けているが、「子供への普及はまだまだ。一時は興味を示しても、大きくなるにつれて離れていってしまう。長い目で見ていくしかないですね」と今後の課題にしている。簡単に楽しめる川柳。これを機にチャレンジしてみませんか。(芝野 栄一)

 ◆経済アナリストの森永卓郎さん「サラリーマンの悲哀もAIで変わる」

 経済アナリストで健康志向でも知られる森永卓郎さんがサラ川について語った。

 「情報番組の仕事を長くやっていますから、当然、毎年、全作品をチェックします。サラ川の定番は『上司の悪口』と『妻への不満』。それに時代を象徴するテーマの作品が加わります。初期のサラ川はボディコンなんて言葉が出てきたように、バブル時代を象徴していた。まだ日本経済が元気だったので“モーレツサラリーマン”の余韻が残る句が目立っていましたが、どんどんなくなっていきましたね。

 最近は働き方改革や生産性向上を詠んだ句が多いですが、今はまだ(AI導入などの)影響が働く人たちに降りかかっていない。40年先には9割の仕事がAIや機械に取って代わられると言う研究者もいるくらいで、そうなるとクリエイティブな仕事ができる人とそうでない人に大きな格差が生まれます。サラ川を支えている『中流』がなくなり、サラリーマンの悲哀も大きく変質するでしょう。昨日まで一緒に働いていた同僚が、突然自分の1000倍の収入を得るケースもあり得る時代にどんな句が詠まれるのでしょうかね。

 今回はぶっちぎりのトップと言える作品がありませんでしたが、個人的には優秀100句に入っていた『正直で 忖度(そんたく)なしの 体重計』(綾波翔太郎)という句が一番と思いました。ダイエットに努力していても、少しサボったら体重計は一切、忖度なしに教えてくれます。(ライザップとの)契約が3月で終わりましたが、その後も食事には気をつけています。だけど運動は忙しくてしていない。筋トレをやめると体がゆるんできますね」(談)

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