藤井聡太七段も参戦“将棋史上最速の戦い”羽生竜王がチェスをヒントに考案…AbemaTVトーナメント

2018年6月11日11時0分  スポーツ報知
  • 対局直前ながら、リラックスした表情で取材に応じた藤井聡太七段
  • 近藤誠也五段(右)との初戦に臨む藤井七段

 史上最速棋戦、誕生―。なんと「各5分」の持ち時間で行われる非公式戦「第1回AbemaTVトーナメント inspired by 羽生善治」が17日から同局で放送開始(毎週日曜・後8時、全13回)される。羽生善治竜王(47)がチェスのルールをヒントに着想、提案して実現した超早指し棋戦。藤井聡太七段(15)も参戦し、「スリリングな臨場感を感じていただけたら」と語っている。(北野 新太)

 駒を持った「神の子」の指先は、止まることなく盤上で乱舞する。いつもは冷静沈着な表情に時折、焦りの色が浮かぶ。通常の対局では見られない光景だった。

 5月27日、都内スタジオ。藤井七段が予選収録を終え、取材に応じた。「これほど短い時間で指すことはなかったので、どんどん決断していくのは新鮮でした。一度考えてしまうと一気に持ち時間が減ってしまうので、時間の使い方が難しいです。決断力が重要になってくると思います」。ジェットコースターを乗り終えた直後の少年のように、充足と高揚を漂わせる笑顔だった。

 一般の人が抱く将棋の対局のイメージは「静」だろう。象徴となるのは、盤の前で長考に沈む棋士たちの沈黙。佐藤天彦名人(30)に羽生竜王が挑む構図で進行中の名人戦7番勝負では各9時間の持ち時間が与えられ、2日間にわたって一局を指している。

 ところが、今回の新棋戦が表現するのは「動」の世界。対局者は数秒ごとに一手を選択し、約30分も要さずに一局の決着がつく。以前からNHK杯、JT杯将棋日本シリーズなどの早指し棋戦はあるが、新棋戦の持ち時間「各5分」の短さは過去に例がない。

 さらに、新棋戦では「一手指すごとに5秒の持ち時間を加算」という独自ルールを採用している。チェス界で広く用いられている「フィッシャールール」を将棋に取り入れるアイデアは、羽生竜王が着想したものだ。AbemaTVが日本将棋連盟に新棋戦たち上げの相談を持ちかけたところ、国内最強のチェスプレーヤーでもある羽生竜王からの提案があった。

 早く指せば指すほど持ち時間は長くなるが、ミスも生まれやすくなる。しかも、通常の棋戦では持ち時間を使い切っても一手につき1分、あるいは30秒の猶予が与えられるが、フィッシャールールには存在しない。例えば残り1秒の時点で一手を指すと、次の一手は残り6秒で指さなければならない。持ち時間を使い果たせば、当然反則負けとなる。切迫と戦略が同居する娯楽性の高いシステムといえる。

 現代将棋は進化を極めており、長い持ち時間の勝負では二転三転のシーソーゲームは少ない。しかし、新棋戦の予選では、残り数秒に追い込まれた側の難解な勝負術や逆転に次ぐ逆転などスペクタクルな勝負が多く見られた。

 AbemaTVの将棋チャンネルゼネラルプロデューサー・塚本泰隆さんは、予選の収録を終え「期待していた以上の手応えがあります。コアなファンの方だけでなく、一般層にも届く面白さがありますね。羽生竜王の人知を超えた直感力を痛感します」と、コンテンツ力を実感。羽生竜王も「将棋の要素を最後まで残しながら早く指して、ファンの皆さんに楽しんでもらえるようになってくれたら。初めての試みなので、どういった反響、反応が返って来るのか楽しみです」と、期待を寄せる。

 超早指し棋戦ならではの指し手を連発し、予選の対局を終えた藤井七段は、「残り時間が10秒となると指し手の精度に影響を及ぼす印象もあったので、(時間に追われるのを)できるだけ回避しつつ、急所の局面で時間を残して考えるのがポイントだと思いました」と、振り返った。

 多忙な現代人の観戦にも適しており、ファン層拡大につながる可能性もあるだけに、「短い持ち時間の将棋は、見ている方にとってスリリングで面白いものです。早指しならではの臨場感を感じていただけたらと思います」と呼びかけていた。

 ◆「第1回AbemaTVトーナメント inspired by 羽生善治」 出場棋士は14人。予選は4人ずつ3組に分かれ、1カードごとに3番勝負を指す。各組上位2人が本戦トーナメントに進出する。A組は橋本崇載八段、藤井七段、三枚堂達也六段、近藤誠也五段、B組は山崎隆之八段、増田康宏六段、佐々木大地四段、大橋貴洸四段、C組は高見泰地叡王、阿久津主税八段、永瀬拓矢七段、佐々木勇気六段。予選通過の6人、シードの羽生竜王、同じく久保利明王将の8人で優勝を争う。

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