【プチ鹿島のプチ時評】総裁選はイジられてナンボ!

スポーツ報知
プチ鹿島

 子どもの頃から総裁選を見るのが好きです。自民党のおじさんたちの権力闘争を眺め、非日常のエネルギッシュさを味わう。見る側も好きなことを言って盛り上がる。

 言ってみれば自民党の総裁選は極上の「興行」であったと思う。国民にとっては見せ物でありつつ、自民党側も人材の多様さをPRできる大コンテンツであった。

 たとえば小泉純一郎さんは「自民党をぶっ壊す」と言って喝采を浴びた。あのとき国民は留飲を下げたが結果としては自民党の人気が上がっただけだった。まんまと立て直したのだ。その巧妙さ、老獪(ろうかい)さにあとから気づく。

 だから思う。自民党に良い意味での狡猾(こうかつ)さがまだあったら、今回は安倍首相と石破茂氏を並ばせて何度も首相批判をさせただろう。とくにモリカケ問題を何度もツッコませるのである。これは首相にとってはきついだろうが、石破氏を利用することで自民党にとっては「ガス抜き」ができた可能性もある。興奮と注目を一手に集めて最後はノーサイド感を演出。そのとき我々は気づくのだ。「あ、自民党うまくやったな」と。

 ところが今回は首相サイドは討論や街頭演説をできるだけ避けたという報道が目立つ。身内にもツッコミをさせない作戦らしい。

 首相周辺の発言として「総裁選は党員や党所属議員ら限られた人にしか投票権がない。一般人にも届くような討論会をしても仕方ない」という言葉をちょくちょく新聞で目にする。

 これ、とても「もったいない」と思うんです。むしろ一般人にも届くような討論会をしないと来年の参院選までさまざまな不満を持ち越すことにならないか。来年改選を迎える参院の自民議員からすればこんなに怖いことはないのでは?

 しかしさらに自民党は「公平・公正」を求める文書をマスコミに出した。ああ、もったいない。イジられてナンボなのに!

 党員のツッコミを今年避けたせいで、たまったツッコミが来年夏に一般国民から飛んできたら…。やはり今回はうま味のあるリセット興行を自民党はみすみす逃したように思うのです。(お笑いタレント、コラムニスト)

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