楽器店元店長、客から委託された高級バイオリンを勝手に転売

スポーツ報知
演奏者に人気の高い高級バイオリンのニコラ・ガリアーノ(写真の楽器は事件とは直接関係ありません)

 経営する楽器店で客から委託された1768年製の高級バイオリン「ニコラ・ガリアーノ」を別の店に勝手に約1500万円で売却したとして、警視庁が業務上横領の疑いで逮捕状を取っていた男が、フィリピンの入国管理当局に不法滞在の疑いで逮捕されていたことが6日、捜査関係者への取材で分かった。入管は近く男を強制送還する方針で、警視庁は帰国後に男を逮捕し、詳しく調べるとみられる。

 捜査関係者によると、逮捕されたのは野々山昌弥(まさや)容疑者(56)。東京都調布市で楽器店を経営していた2015年2月、男性客から販売を委託されたバイオリンを、男性に無断で東京都中央区の別の楽器店に約1500万円で売却した疑いが持たれている。その後、野々山容疑者は出国したとみられ、被害者側が警視庁に告訴していた。

 今月5日、フィリピンの入管当局が野々山容疑者の逮捕を発表。入管によると、15年9月以降フィリピンで生活し不法滞在となっていたという。

 野々山容疑者を知る関係者によると、楽器店は弦楽器の有名演奏家だった父が始め、野々山容疑者は十数年前に継いでいた。主に楽器の売買などを行う店長として働いていたが、経営不振で約3年前に閉店。従業員への給料が滞ることもあったが、金銭トラブルなどはなかった。

 同店は演奏者からの信頼が厚く、高級楽器もよく修理に持ち込まれていた。ただ、野々山容疑者はクラシック音楽には興味がなく、ロック、特にヘビーメタルが好きだったという。地元の有名楽器店としてテレビ番組で取り上げられたこともあったが、関係者は「こんなことになって残念です」と話した。

 バイオリンで高額といえば、真っ先に思い浮かぶのが「ストラディバリウス」。17世紀後半から18世紀前半にかけて、イタリア北部・クレモナの職人ストラディバリ一族が製作した楽器の総称で、現在、バイオリンは世界で約600丁が現存するとされる。2011年、日本音楽財団がロンドンでオークションに出品した、通称「レディ・ブラント」は1589万4000ドル(当時のレートで約12億円)で落札。ZOZO前澤友作社長が先月、1717年製「ハンマ」を入手したと発表し話題になった。

 このストラディバリウスに「ガルネリウス」「アマティ」を加えたものが「世界3大バイオリン」と呼ばれる。ニコラ・ガリアーノは、クレモナの製法を受け継いだナポリ出身のガリアーノ一族の中の一人。18世紀半ばを中心に製作した楽器は、3大バイオリンに次ぐ貴重なものとして知られる。

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