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「1984年のUWF」に反論? 専門誌が旧UWFを再検証した

2017年7月12日15時46分  スポーツ報知
  • Gスピリッツ「スーパー・タイガー」特集を掲げる小佐野景浩氏

 プロレス専門誌「ゴング」(休刊)の流れをくむ「Gスピリッツ」vol.44(辰巳出版、1148円+税)が発売された。特集テーマは「スーパー・タイガー」で、1984年4月から85年9月までのわずか1年半だけ存在したユニバーサルプロレス(旧UWF)について、佐山サトル(59、初代タイガーマスク、初代スーパー・タイガー)を徹底インタビューしている。

 同じくロングインタビューに応えている藤原喜明(68)が「最近、何だかUWFに関する取材が多いんだよな」と言うほど、UWF関連本やムックが出ている。それは、「1976年のアントニオ猪木」をヒットさせた柳澤健氏(56)による「1984年のUWF」(文藝春秋、1800円+税)が売れているからに他ならない。

 「Gスピリッツ」のメインライターは元「週刊ゴング」編集長の“熱血プロレスティーチャー”こと小佐野景浩氏(55)。小佐野氏が佐山、藤原、そして佐山のシューティング時代の弟子で後に全日本プロレスに入門する北原光騎(53)の3人をロングインタビュー。UWF公式ルール全文や、当時の北沢幹之レフェリー、上井文彦営業部長、スーパータイガージム・寺島幸男会長の座談会を収録している。

 柳澤氏の「1984年のUWF」では、84年だけではなく、前田日明(58)らが88年に出直して熱狂的なブームを呼んだ新生UWFまでの流れを網羅したUWF史になっており、その書評で「タイトル通り『84年』に特化したものを期待していたが、それはマニアックすぎるか」と書いたことがあるが、それを専門誌がやってくれた。

 しかも、他のUWF本とは違う歴史が見えてきたりする。これは、売れたことによって“定説化”している「1984年のUWF」への反論なのかもしれない。「Gスピリッツ」の佐々木賢之編集長(45)は「そういう意識はありませんが、プロレスマスコミの視点で検証してみました」と言う。

 佐山サトルにこれでもかと細部にわたる突っ込んだ質問をできるのは、小佐野氏ならではだろう。佐山は「格闘技には格闘技の、プロレスにはプロレスの文化があるわけですけど、それを僕は侵していたんですから、それは悪いことをしたなと思いますね」と旧UWFでの“実験”を述懐している。

 藤原はこう言っている。「時間が経ったせいか知らないけど、関係した本を読むと、みんな言ってることが自分の都合のいいように変わってるような気がするんだよね」だからこそ、当時を知る記者の突っ込みが光るのだ。ロングインタビューをそのまま収録し、あえて“編集”の手を加えていないのも信頼できる。当時の写真もふんだんに使用している。

 スーパー・タイガー特集以外にも、“皇帝戦士”ベイダーが、たけしプロレス軍団(TPG)で日本デビューした当時を語るインタビューや、キラー・カーンとグラン浜田の歴史的和解対談、ミル・マスカラス連載など、マニアックな企画が並ぶ。「1984年のUWF」のように大衆受けはしないだろうが、「Gスピリッツ」は、いつまでもなくならないでほしいと願う。(酒井 隆之)

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