医療事故調査制度発足1年、遺族は不満、制度機能せず

2016年10月10日15時0分  スポーツ報知

 医療事故調査制度が昨年10月1日に発足してから1年がたった。これは、診療行為で予期せぬ死亡事例や死産があった場合、すべての医療機関は「医療事故調査・支援センター」(日本医療安全調査機構)に報告し、院内で調査を行い、遺族に調査結果を説明するというもの。同種の医療事故を起こさぬよう再発防止策を各医療機関に提供するのが目的だ。

 鉄道・航空機などの事故では、責任の追及を目的とした警察・検察による捜査と、事故原因の究明・再発防止を目的とした運輸安全委員会による調査の2通りある。医療事故調査制度は後者の再発防止が目的で、責任の追及は行わない。それだけに積極的な報告が期待されていた。

 ところがフタを開けてみると、制度が始まって11か月後の8月末時点で356件の報告があったが、当初想定した年間1000~2000件の3分の1~6分の1に過ぎなかった。正直に報告すると医療過誤を問われかねないという警戒心が働いたのかもしれない。

 全国の弁護士で構成する医療事故情報センター(事務局・名古屋市)が今月1日に「医療事故調査制度110番」を開設して電話相談を受け付けたところ、制度が始まった昨年10月以降に亡くなった58件の遺族から相談があった。が、うち制度に基づく「医療事故調査・支援センター」へ報告があったのは5件だけだった。相談者からは「医療側が動かないと(調査が)始まらないのはおかしい」「なぜ患者側から届け出ができないのか」といった不満が寄せられた。

 医療事故調査制度は、年間約800件におよぶ医療過誤訴訟(民事)を減らす狙いもある。医療過誤訴訟の大半は賠償金が目当てではなく、真相を明らかにしてほしいという願いからだ。現状では訴訟を減らせるとは思えない。

 今後の改善点として

 ▼遺族の要求があれば必ず調査すること

 ▼報告書に遺族からの聞き取りを入れること

 ▼病理解剖だけでなく遺体をコンピュータ断層撮影(CT)して第三者が「死亡時映像診断」を行うことなどが挙げられる。

(医療ジャーナリスト・田中 皓)

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