【佐藤優コラム】米露に挟まれ北方領土交渉の雲行き怪しく

2018年3月25日12時0分  スポーツ報知

 21日、東京で河野太郎外相とロシアのラブロフ外相が会談した。共同記者会見でラブロフ氏は、自衛隊が米国から導入する陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」などを念頭に、「米国がアジア地域にミサイル防衛システムを展開することは、ロシアの安全保障に直接関わる問題だ」と指摘して、日米の軍事協力をけん制した。これを受け、両外相は政府高官協議を4月から5月にかけて計2回開くことで合意した。

 今後の北方領土交渉は、平和条約締結後にロシアが日本に歯舞群島と色丹島を引き渡すことを約束した日ソ共同宣言(1956年)を軸に進められる。ラブロフ氏の懸念表明から当然、推定されることであるが、5月26日にモスクワで予定されている日露首脳会談でプーチン大統領は安倍首相に、日本に引き渡した後の歯舞群島と色丹島に米軍が展開しない保証を求めてくるであろう。引き渡し後の諸島に米軍が展開する可能性があるならば、ロシアは領土交渉から降りると思う。

 1日に、米国のミサイル防衛(MD)に対抗する最新の攻撃兵器を開発したとプーチン氏は年次教書演説で表明した。この日からロシアの対米政策は質的に変化したと筆者はみている。日露首脳会談でプーチン大統領は、引き渡し後の北方領土に米軍が展開しないことを文書で確認せよと迫ってくると思う。安倍首相が政治決断しなくてはならない状況が近未来に訪れる。

 現在、森友学園問題をめぐる財務省による文書改ざん問題で、安倍政権の権力基盤は弱体化している。このような状況で外務官僚は、日米関係に悪影響を与える可能性がある歯舞群島と色丹島の非軍事化については慎重な姿勢を取るであろう。北方領土交渉の雲行きが怪しくなりそうだ。(作家・元外務省主任分析官)

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