早大に徳山、慶応に福井、大阪桐蔭バッテリー対決で早慶戦!

スポーツ報知
進学する慶大の練習に合流した(左から)履正社・若林、大阪桐蔭・福井、慶応・正木は、大学での活躍を誓った

 進学を選んだ高校球児たちが、続々と大学の練習に合流し始めている。昨春のセンバツを制した大阪桐蔭の福井章吾捕手(3年)は、難関のAO入試を突破して慶大に合格。同校から初の慶大野球部入りを果たした頭脳派は、環境情報学部で「脳科学」に関する研究をしていく意向を明かした。また、福井と正捕手の座を争った岩本久重は、エース・徳山壮磨(ともに3年)とのバッテリーで早大入り。花の早慶戦で、異例の大阪桐蔭対決が見られそうだ。

 揺るぎない信念と明確なビジョンを持って、福井が慶大野球部の門を叩いた。

 「小さい頃から『早慶戦』という言葉は、耳に入ってくるフレーズでした。早稲田で野球をやるのか、慶応で野球をやるのかと考えた時に、慶応のカラーの方が自分には合ってるんじゃないかと思って受験しました」

 だが、慶大にスポーツ推薦はなく、AO入試と呼ばれる自己推薦入試を突破する必要がある。3年前には、大阪桐蔭の先輩が1期、2期と2度受験し、ともに失敗した例もあった。実際、福井も1期は不合格に。他大学からは多くの誘いが寄せられたが、思いは変わらなかった。

 「少し焦る部分もあったんですけど、慶応に行くという意思は固まっていたので誘いは全部断りました。慶応で野球がしたいという思いを持ち続け、1日8時間くらいの試験対策をしたので、何とか2期で通れたのかなと思います」

 昨年12月中旬に合格通知を受けた時、昨夏の甲子園で75キロだった体重は86キロまで増えていたが、現在は81キロまで絞り込んだ。憧れの慶大でやりたいことがある。

 「慶応の野球部は、新しいことに挑戦する精神を持っているという話を聞きました。高校時代、主将として寮やグラウンド内、私生活など全てのルールを大きく変えて、春も夏も甲子園に出られたし、全国制覇もできました。慶応でもいろんな新しいことに挑戦して、その後のチームの発展に貢献できればいいかなと思っています」

 大学での野望は、グラウンド外にも及ぶ。環境情報学部で学びたいことを聞かれると、よどみなく言い切った。

 「脳科学の勉強をします。きっかけは、夏の甲子園で仙台育英に負けた試合【注1】です。最後はスタンドのタオル回しがすごくて…。大阪桐蔭は、心技体がMAXで鍛えられる場所だったんですけど、それでも春夏連覇ができなかった。目や耳から入ってくる情報が、脳に伝わって体のパフォーマンスにどう影響を及ぼしているのか。その関係性を解析して、どんな状況でもしっかりとパフォーマンスを発揮できるように研究をしていきたいです」

 プレーヤーとしての目標も明確だ。

 「捕手には郡司さん【注2】がいらっしゃるので、打撃をアピールして内野で勝負しようかなと思ってます。同級生に素晴らしい選手【注3】がいるので、4年時は主将としてチームをまとめて、春も秋もリーグ優勝して、高校でも達成した日本一になりたいです。個人的には、ライナー性で間を抜く打者になることをテーマに、通算100安打を目指していきたいです」

 ライバル・早大には、バッテリーを組んでいた徳山と正捕手の座を激しく争った岩本がそろって進学する。

 「3年間、同じところで過ごし、同じ目標に向かって取り組んできた仲間が、次はライバルになる。でも、自分の中ではある意味、仲間のまま。六大学という一つの枠の中でしのぎを削って、お互いを高め合った中で、最後は早慶戦に勝って、自分が主将として天皇杯を手にできたらいいと思います」

 その目は、大学卒業後までしっかりと見据えている。

 「僕は体もあまり大きくないので、プロ野球選手になるというよりは、社会人で野球を長く続けたいです。野球選手として、というのはもちろんですけど、一人の人間として評価された中で、企業に入って野球を続けて―というのが、今の自分が見えている4年後の目標です」。(構成・片岡 泰彦)

 ◆福井 章吾(ふくい・しょうご)1999年4月23日、大阪・豊中市生まれ。18歳。幼稚園年長で野球を始める。豊中五中では箕面ボーイズに所属し、2年春に1学年上のヤクルト・寺島とともに全国大会出場。大阪桐蔭では2年のセンバツからベンチ入りし、春の府大会から一塁のレギュラー。3年春から正捕手。168センチ、81キロ。右投左打。

 早大・岩本が大学でのリベンジを誓った。新チームを結成した2年秋は正捕手だったが、昨年2月に左手首を骨折。センバツ優勝はベンチで記録員として見届けた。夏の甲子園も背番号9をつけ、捕手としての出場はわずか1イニングだけだった。「去年は、けがから巻き返すことができずに、すごく悔しかった。誰にも負けない捕手になりたいので、福井と捕手として早慶戦で戦えるのは楽しみです」と胸を躍らせた。

 【注1】昨夏の甲子園3回戦。大阪桐蔭は1点リードの9回裏、2死一、二塁から遊ゴロの送球を受けた一塁手がベースを踏めずにセーフに。バックネット裏の観客までもがタオルを回す異様な雰囲気の中、次打者に逆転サヨナラ2点適時二塁打を浴びた。

 【注2】郡司裕也。仙台育英出身の2年生で、1年秋から正捕手。昨春は5番を打ち、ベストナインを獲得。

 【注3】昨春センバツで準優勝した履正社の4番・若林翔平、高校通算50本塁打を打った慶応・正木智也らが入部。

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