•  スポーツ報知のWebサイト限定コラムがスタートしました。最前線で取材する記者が、紙面では書き切れなかった裏話や、今話題となっている旬な出来事を深く掘り下げてお届けします。皆さんを「ほーっ!」とうならせるようなコラムを目指して日々配信しますので、どうぞお楽しみください。

プロを目指さない審判たちが「NPBアンパイア・スクール」を受ける理由

2017年12月25日16時37分  スポーツ報知

 審判員の育成を目的とした「NPBアンパイア・スクール」が、12月16日から22日まで、さいたま市のロッテ浦和球場などで開催された。

 2013年に始まった同スクールの主な目的は、プロ野球審判員の採用。63人の受講者の大半はプロの審判員になることを目指している。昼間はグラウンドで実技講習、夜はホテルでルールなどの座学と濃厚な7日間だ。

 期間中、報道陣に公開された実技講習を取材した。受講者は審判経験ゼロの高校3年生からアマ野球審判として豊富なキャリアを持つ人まで様々で、マスクやプロテクターの付け方といった基礎編から、猛抗議する監督(講師役の現役審判員が熱演)に退場コールを浴びせる高難度?のテクニックまで、教える内容も多岐にわたる。

 最年長受講者の笠井篤司さん(53)は、北海道・利尻高の教員で道高野連の審判員を務めている。プロ志望ではなく、技術向上を目的に15年から3年連続で受講。2011年には道高野連からの派遣審判員として夏の甲子園大会に参加しているベテランだが「甲子園で審判を務めたことで、改めて審判の難しさや奥深さを知り、このままではいけないと思った」という。自らのレベルアップももちろんだが、「北海道では私も若い審判員に教える立場ですから」と、講習を通じて後進の指導に結びつくヒントも地元に持ち帰る。

 今回は台湾プロ野球(CPBL)から楊崇●(火へんに軍)さん(36)ら5人の審判員が初めて派遣された。今秋、NPBの谷博技術審判員らが台湾を訪れた際、判定時の動き方などに最新の国際基準と違っている部分があったことなどから、同スクールへの派遣が決まった。

 楊さんは15年に日本で行われた侍ジャパンと欧州代表の強化試合に参加するなど、国際大会の経験もあるベテラン。プロを目指していた高校3年生の時、チームの監督に「審判という道もある」と勧められてこの仕事に。プレーヤーとしての夢はかなわなかったが、「同年代で今もプロ野球の世界に残っているのは自分だけです」と胸を張る。国際化が進む中で、「最新の技術を短期間で学ぶいい機会。将来は台湾でもスクールをやれたらいいと思っています」と、笠井さんと同じように“教える”側の視点を持ちながらの受講だ。

 野球に限った話ではないが、本来は同じルールでプレーしているはずが、プロとアマ、さらには国内外で判定基準の違いを感じる人は多いはず。プロ審判の採用・育成という主眼からは離れてしまうかもしれないが、笠井さんや台湾の審判員たちがそれぞれのホームグラウンドに持ち帰った経験や知識は、そういった“ずれ”の解消にきっと役立つはずだ。(記者コラム)

コラム
今日のスポーツ報知(東京版)