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甲子園で流れた「闘魂こめて」

2018年5月9日16時0分  スポーツ報知
  • 圧勝した4月22日の阪神戦後、ナインとハイタッチを交わす巨人・高橋監督

 一昔前の阪神ファンの気質を考えると、大ブーイングとともに、悪意のある替え歌の大合唱は間違いなかっただろう。だが、記者席から見る限り、コアなファンの集まるライトスタンドを含めて、殺気立つ様子はなかった。

 4月20日からの阪神・巨人3連戦は、甲子園球場の公式戦で初めて巨人の球団歌が場内放送された歴史的なカードだった。オープン戦でアレルギー反応の度合いを確認してのGOサインとなったが、公式戦は応援の熱量が違う。ましてや初戦、2戦目と連敗し、3戦目の22日の試合は6回終了時で1―7の一方的な展開だった。

 「ゆけゆけ♪ それ~ゆけ~」。惨敗ムードの中で7回表攻撃前に流れた「闘魂こめて」だったが、虎ファンは予想以上に冷静だった。「心配していましたが、平穏無事で良かったです」と阪神の球団幹部も胸をなで下ろしていた。

 他球場では以前からビジターチームも「ラッキー7」の攻撃前に、球団歌を流すことが定着している。甲子園では遅ればせながら、今年からの実施。数年前から球団内で是非を議論されていたが、「他球団の歌はともかく、『闘魂こめて』は大丈夫なのか」という声が根強かった。決断の背中を押したのは、他ならぬ阪神ファンだった。「相手チームの歌が甲子園だけ流れないのはファンとして恥ずかしい」との声が寄せられたのだ。

 阪神の2017年の主催試合観客動員数は、12球団トップの303万4626人。10年後も今の人気を維持するには、裾野を広げる必要がある。そのためには、子どもや女性が安心して野球を楽しめるスタンドの環境づくりが大切。球団も観戦マナーの向上へ力を入れており、試合前の大型ビジョンでは、OBの桧山氏が「くたばれ」などの汚いヤジをやめるよう呼びかける映像を流している。

 長年、タイガースを取材してきた私は大阪生まれの大阪育ち。関西人特有の東京への対抗心、アンチ巨人の心理も理解できる。だが、野球を楽しむために、ゆがんだ感情や、憎しみはいらない。最近は少なくなってきたが、ジャビット人形を引きずって歩くファンを見ると悲しくなる。ヤジを飛ばしている当人は軽い気持ちであったとしても、周囲で不快な思いをしている人が多い。

 どこの球団のファンであっても野球ファンは、みんな仲間。実は阪神と巨人は球団歌だって兄弟だ。「闘魂こめて」は、阪神の球団歌「六甲おろし」や高校野球でおなじみの「栄冠は君に輝く」と同じく古関裕而の作曲。甲子園で流れても違和感がないのも当然か。(記者コラム・島尾 浩一郎)

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