金メダルのカギは赤ヘルにあり!
侍のユニホームが、赤く見えたというのは言い過ぎか。
柳田の劇的な逆転サヨナラ2ランで稲葉ジャパンがMLB選抜に勝利を収めた9日の日米野球(東京D)。ゲームセットの瞬間には気づかなかったが、一枚の写真に心を奪われた。
翌10日のスポーツ報知3面に掲載された清水カメラマンのワンショット。本塁まで戻って来た柳田を出迎える日の丸戦士が、最高の笑顔を浮かべている。何気ない歓喜の輪に見えるが、その中心に陣取るのがカープの選手なのだ。
菊池は両手甲を前に出す「カモン!」のジェスチャーで喜びを爆発させ、その両脇では、会沢と田中が何かを叫んでいる。すぐ後ろに大瀬良と岡田も白い歯を見せている。
「意識したわけじゃないんですけど、これが自然な形。カープカラーが出たんだと思います。僕たちはチームメートの活躍をみんなで祝福することが染みついている。やっぱり新井さんとか、黒田さんの影響だと思いますね」。大瀬良は無意識であったことを強調しながらも、どこか誇らしげだった。
一体感が自然にあふれ出てくる。これがリーグ3連覇を達成した広島の強さなのだ。
今年7月20日の広島―巨人戦(マツダ)。下水流の一発でサヨナラ勝ちを収めた瞬間、真っ先にベンチを飛び出したのが、チーム最年長の新井だった。右拳を振り上げ、ピョンピョンと跳びはねる姿がカメラに抜かれ、チームメートの爆笑を誘ったという。
「なんでカメラが俺を抜いているんや。めっちゃダサいガッツポーズしているし、みんなにいじられたわ」。新井は苦笑いで振り返っていたが、何よりも勝利を欲する姿勢、背中が後輩たちを引っ張ってきた。
新井は2008年の北京五輪で4番を張ったが、メダルには届かなかった。当時、右翼を守っていたのが稲葉監督だった。今でも10年前の悔しさを忘れない指揮官は言う。
「所属チームでは代えられないケースでも、ジャパンでは代えられるシチュエーションがある。でも、代わった選手が声を出して応援している。そういうところで結束が増していく。どんどん続けていこうと思う」
開幕まで2年を切った東京五輪。チームがカープのような「家族」になれば、表彰台のてっぺんも見えてくるはずだ。(記者コラム・表 洋介)