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YOUはなぜ準硬に? 巨人・坂本工を生んだ関学大の準硬式野球部で聞いた

2019年3月15日18時25分  スポーツ報知
  • 関学大準硬式野球部の(左から)中村、前田、建畑、梅原
  • 関学大準硬式野球部が練習する同大学の第2フィールド
  • 見た目は軟式、触れば硬式、これが準硬式球の特徴だ
  • 関学大準硬式野球部出身の巨人・坂本工

 「じゅんこーって何?」。準硬式野球部でマネジャーをやっていましたと言うと、こう返されるのが定番だった。「準硬式っていうのは…」という説明を何百回と繰り返してきたが、最近ありがたいことに、その準硬式野球が脚光を浴びつつある。

 立役者と言えるのが関学大の準硬式出身の巨人・坂本工宜投手(24)だ。今月支配下登録されると、オープン戦ではここまで4試合6回1/3で無失点。投げるたびに評価を上げ、スポーツ報知の紙面を大きく飾ることも多くなった。同部OGとしてもこの機会に準硬をもっと知ってもらいたいと思い、坂本工が4年間腕を磨いた関学大準硬式野球部を尋ねた。

 兵庫・西宮市の関学大キャンパスの外れに、グラウンドはある。私や坂本工の在学中は土のグラウンドだったが、約2年前に隣接するラグビー場を改装した際、そちらで使っていた人工芝を外野に移植したらしく、立派な野球場に変わっていた。硬式野球部のような広さはないが、それでも学校のすぐそばに専用球場がある環境は恵まれている。

 関学大にはオリックス・田口壮1軍野手総合兼打撃コーチ(49)や日本ハム・宮西尚生投手(33)、ロッテ・荻野貴司外野手(33)らを輩出した硬式野球部もあるが、なぜ準硬式を選んだのか。建畑亮太主将(3年)は「関学の準硬はレベルも高くて日本一を目指せる。でも学生として勉強も大事なので、どちらも本気でできるし、就活もちゃんとできる。練習も高校の時と変わらない熱い雰囲気でやっていたので入りたいと思った」と力強く話す。副将の梅原塁外野手(3年)も「硬式ではレベル的に試合に出られないだろうなと思った。でもレベルの高いところで全国を目指したかった。時間を割いて練習して、勝ち負けを味わえるのは体育会だからこそ。だからサークルではなく準硬式を選んだ」と部活動で野球をやる醍醐味を明かした。

 関学大では平日も約3時間ほど練習を行っているが、基本的には授業が優先。長期休暇中もほぼ毎日練習するが、昼すぎには終わるためバイトも就活もできる。近年は海外留学をする部員もいるという。ガチではあるがガチガチすぎず、でもやるときは真剣に毎年全日本の舞台を目指している。硬式でもなくサークルでもなく準硬式を選ぶ理由は、学生生活と両立できることも大きいと思う。

 学生が主体となれる面も準硬式の良さだろう。指導者や関係者がたくさんいて、レベルごとにチーム分けされる硬式とは違い、準硬式では本格的な指導者がいない大学がほとんど。関学大でも学生が主体となってチームづくりを行っている。自分たちで練習メニューを考えてミーティングを行い、試合では学生が采配を振るう。現在70人近い部員がいるが「みんなでやるメニューが多い。硬式だとレギュラーとベンチがはっきりしているけど、準硬式は一人一人の存在意義が大きい」と前田敦也捕手(3年)。どうやったらチームに貢献できるか考えることで、誰もが主役になれるのが準硬式なのだ。

 その代表例が坂本工かもしれない。中村亮副将(3年)が「硬式なら変えにくいけど、思い切って転向できるのも準硬の良さ。それで化ける可能性もある」と話すように、最初は外野手として入部したが、2年時にかねての夢だったという投手に転向した。しかし初登板は伊藤真人監督(72)が「スピードはあったけど、制球難だった。プロまでいくとは思っていなかった」と振り返るほど不十分な出来で、最初から順風満帆というわけではなかった。

 しかしその後は準硬式の良さである自主性を生かし、食事やトレーニングについて研究を重ね、3年時には球速が140キロを超えるまでに成長した。指揮官は「今は細い子が多いけど、体つきは違いました。とにかく勉強熱心で、トレーニングなどの本を勧めても『もう読んだことがある』と言われたこともありました」と懐かしみ、建畑主将も「朝食から栄養を考えた物を食べていたり、プロに入るために徹底していた」と明かす。坂本工の熱心な性格に加え、一見プロ入りには不利と見られる準硬式の環境も、才能を開花させる後押しとなったのだ。自らの手でプロ入りを勝ち取り、支配下契約をつかんだ右腕の姿はカッコイイとしか言いようがない。

 関学大準硬では“坂本効果”も表れ始めている。中村が「これまで祖父に『準硬って何や』ってバカにされていたんですけど、工宜さんが載った新聞とかを見せたら納得してくれた。うれしい」と声を弾ませると、前田も「インターンの面接で『プロに行った選手がいるよね』と言われた。説明がしやすくなったし、プロに選手がいったほどのレベルの高い環境でできていることは誇りに思えます」と胸を張った。伊藤監督も「この4月には入部希望者が例年より増えるかもしれない」と期待するなど、影響力は大きいようだ。私も準硬式に携わった人間として、軟式にも硬式にもない魅力をこれからも伝えていきたいと思っている。

 ちなみに関学大も所属している「関西六大学リーグ」の春季リーグ戦は、今月21日にわかさスタジアム京都で開幕する。入場は無料、席も選び放題だ。坂本工のようなダイヤの原石を発掘しに、観戦に訪れてみてはどうだろうか。(記者コラム 一般スポーツ担当・筒井 琴美)

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