近鉄、南海、ダイエーで活躍したカズ山本さん、年間80万人集まる「子どもの館」館長になっていた

2018年10月6日16時0分  スポーツ報知
  • サンタクロース姿のカズ山本さん
  • 縁日では盛り上げ役の役目を自ら務める
  • 「カズ館長の野球教室」は大人気

 プロ野球のダイエー(現ソフトバンク)や近鉄(現オリックス)で活躍したカズ山本さん(60)は、故郷の北九州市立「子どもの館」館長を開館当初から17年間務めている。小学生が野球を始める“きっかけ作り”の野球教室に加え、クリスマスにはサンタクロースに変身し、こどもの日や縁日には盛り上げ役としてフル回転。“宣伝部長”の役目も果たし、同館は年間80万人が来場する人気スポットになった。

 「子どもの館」の最寄り駅は、北九州市の中心部・小倉駅からJR鹿児島本線に乗って約20分の黒崎駅。かつては北九州工業地帯の一角として栄えたが、同館開設時の2001年頃は大型ショッピングセンターの出店が相次ぎ、駅前商店街は客足が減り始めていた。カズさんは、当時の末吉興一・北九州市長に呼ばれ、館長就任を打診された。「市長には『黒崎がさびれてきた。駅の近くに子供の施設を造るから、カズさんの力で1年間で30万人のお客さんを呼べるようにしてもらえないか』と頼まれた。北九州は僕の故郷だから『分かりました、頑張ります』と、その仕事を引き受けることにしました」

 子供たちに「出会い・体験・感動のスペース」を提供する「子どもの館」。集客が期待できる夏休み前は、カズ館長とスタッフが地元新聞社やテレビ局を回って営業活動を続けてきた。

 「30年前、ダイエーが南海を買収して(西鉄、太平洋クラブ、クラウンライター時代からの)ライオンズ・ファンばかりの博多に移った際に球団職員が苦労する姿を見てきたから、営業の大切さは知っていた。この17年間、マスコミ各社には『イベントの内容を少しでも紙面に掲載し、30秒でもテレビに映してください』と頭を下げ続けた。その結果、1年目は夏に20万人、その他の時期に10万の計30万人が来館。今では年間80万人以上の方々に来ていただき、僕の肩書は館長よりも宣伝部長の方がピッタリくるだろうね」

 プロ野球選手から公共施設の裏方に転身。年を重ねて気づいたことがある。「長嶋茂雄さんは巨人監督時代、『ジャイアンツ戦の視聴率が20%を切った。お前ら、もっと頑張れ』と選手にハッパをかけていたらしいね。当時、僕は現役だったので『そんなこと選手に関係ないよ』と思ったけど、今はそれがよく分かる。どれだけお客さんを呼べるか、どれだけテレビのチャンネルを回してもらえるかが一番大切なんですよ」

 「子どもの館」で一番人気のイベントは、毎月1回開催される「カズ館長の野球教室」。電話申し込みは何と5分で締め切られる。「対象は小学校2~6年生で、これから野球チームに入ろうとする子のきっかけ作りが目的。グラブをはめてやってみようかという初心者に、まず野球を好きになってほしい。館内に簡単なバッティングもできる場所を用意しています」

 25歳の時、近鉄から1度目の戦力外通告を受け、バッティングセンターでアルバイト中に南海の穴吹義雄監督(今年7月、85歳で死去)に誘われてホークスに入団。ダイエーで年俸2億円を突破した翌年、38歳で右肩故障と高年俸を理由に2度目の戦力外。何度も挫折を経験してきたが、子供たちには自身の歩みを話して夢と希望を託す。「僕の小学校時代は軟らかい庭球(テニスボール)を手で打って三角ベースを回る野球。中学校に入って初めてユニホームとスパイクを身に着けた。今の子供は当時の僕よりはるかにうまいから、練習して努力したら僕の記録なんかすぐ抜ける。それは子供だけでなく、親にもよく言ってることです」

 月~木曜日、土曜日夜間はソフトバンクのホークスジュニアベースボールスクールの講師、マンツーマンで指導する個人レッスン(有料)が入り、福岡県と山口県を駆け回る。

 「ホークスの講師、個人レッスンは野球経験のある小中学生が対象。高校に進学後、県大会で活躍した生徒もいるよ。子供の塾が終わる夜8時から始まる個人レッスンもあって、夕方以降が忙しいなあ」

 小中学生の野球指導歴が15年以上となり、カズさんには「心配事」がある。「サッカーの日本代表がW杯に出ることが当たり前になってきて、野球界の欠点が目につくね。サッカーは高校生とプロが試合をできるけど、野球はプロ、社会人、大学、高校が政権争いみたいにバラバラに活動しがち。最近はサッカーで試合に出られない子が野球に流出し、昔と逆だね」

 そんな時代だからこそ、カズさんは野球界の「改革」を訴える。「これから夏はもっと暑くなる。高校野球の場合、甲子園大会の開会式は3校一緒に入場したり、主催者側の長いあいさつを省いたりとか、暑さを防ぐ短時間の運営方法に変えるべき。サッカーW杯では若い女性が日の丸を顔にペイントして楽しんでいる。野球界もこれまで正しいと思ってきた伝統を見直し、だれもが『楽しそうだな』と思うような方向に変える勇気をもってほしいです」

 ◆カズ山本(かず・やまもと、本名・山本和範)1957年10月18日、北九州市育ち。60歳。戸畑商(現北九州市立高)から、76年ドラフト5位で近鉄に投手で入団し、外野手に転向。82年に戦力外通告を受け、翌83年に南海へ。88年のダイエー買収後も主力として活躍。95年に自由契約となり、96年に近鉄復帰。99年に現役引退。通算成績は1400安打、175本塁打、669打点。ゴールデン・グラブ賞1回(86年)、球宴MVP2回(86年第1戦、96年第1戦)。引退後は「子どもの館」館長のほか、社会人野球クラブチーム・福岡オーシャンズ9の総監督を務める。

 ◆北九州市立「子どもの館」 同市八幡西区、JR黒崎駅隣の商業施設COMCITY7階にある。館内には運動・体験・ものづくりなどの6テーマに分かれたコーナー(キッズハウス、ボールプール、あそび工房、変身スタジオ、ふしぎ探検、チャレンジスポーツ)があり、幅広い年齢の子供たちが楽しめる。親子体操教室や料理教室など、家族一緒に楽しめるイベントを実施。子育てや栄養相談会など、子育て支援イベントも開催している。

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