“球界の野良犬”愛甲猛氏が高校野球熱トーク「輝星は断然プロ」「根尾はイチローのような1番に」

2018年9月29日14時0分  スポーツ報知
  • 「球界の野良犬」の異名を誇る愛甲さん。言葉の端々に野球への愛情があふれる

 夏の100回大会が空前の盛り上がりを見せ、運命の「10・25」ドラフト会議もあと1か月に迫ってきました。今週の「週刊報知高校野球」は横浜高のエースとして1980年夏の甲子園で全国制覇を果たし、ロッテや中日でも活躍した“球界の野良犬”こと愛甲猛氏(56)が登場。高校野球を巡るさまざまなトピックスについて、持論を展開していただきました。(聞き手・加藤 弘士)

 ―夏の甲子園で準優勝した金足農・吉田輝星の力投は多くの人々の感動を呼びました。

 「俺の母校・横浜も3回戦で吉田にやられちゃったよ(笑い)。高校生ってさ、球が速いとフォームとかいろんな部分の完成度が、まだまだという投手が多いんだ。逆に完成度が高い投手は、ボールが速くないことが多い。でも彼はプロに入ってもそんなにいじることがないぐらい、完成度が高い投手だと思ったね」

 ―現時点ではまだ彼の口から進路が表明されていません。愛甲さんならプロと進学、どっちを勧めますか。

 「個人的な見解だけど、将来的に野球でメシを食いたいんだったら、断然プロを勧めたいよ。だって今の能力だけで十分、大学4年生の主力打者を抑えられちゃうから。俺もこれでも高校時代、大学から結構、話はあったんだよ。全然行く気なかったけど(笑い)」

 ―そして、ドラフト1位でロッテに入りました。

 「1年目の鹿児島キャンプでさ、プロの打球や投げるボールを見て、あまりのレベルの高さに驚いた。打者なら有藤さん、落合さん、リー兄弟、投手なら村田兆治さん…本当にすごかった。そこで『こんな打者を抑えられないと、この世界では生き残っていけないんだな』と考えたもんだよ」

 ―甲子園の優勝投手だった愛甲さんでも、度肝を抜かれちゃったわけですね。

 「プロでは、ただいいボールを投げるだけじゃ抑えられない。タイミングだったり、配球だったり、いろいろ勉強しなきゃいけないことがあるんだ。吉田は早いうちに、そういうものに触れた方がいい。入って3年後ぐらいにはプロのエース級になれるぐらいのものを持っているからね。入った球団の監督にもよると思うけど、マー君のように育てようと思うんだったら、1年目から1軍でいい」

 ―吉田の一番の魅力はどこですか。

 「ストレートの質だね。真っすぐの質はプロでもかなり高いところにある。あのような質の高い真っすぐは、投げたくても投げられないよ。スピードガン以上のスピードを感じるボールだから。あと覚えなきゃいけないのは、落ちるボールや抜くボールかな。球種がもう少し増えれば、プロでもすぐに対応できる。早くプロに入って、それをレベルアップさせてほしいね」

 ―その吉田ですが「シャキーンポーズ」を巡り高野連がNGを出すなど、ちょっとした騒動になりました。本人はルーチンでやっているだけだと思うんですが…。

 「別に何かCMのしぐさのマネをしているんじゃないんだから、それぐらいのパフォーマンスがあってもいいんじゃないかと思うよ。俺はそこを注意するより、高校球児には帽子のつばの形を何とかしろと思うよね。どの高校もさ、プロ野球じゃ見ない、ヘンな形を作ったりしているじゃん」

 ―つばを折ったり曲げたり、家や寮で帽子に型を付けたり、頑張っていると聞きます(笑い)。

 「あのへんのセンスのなさを今の高校生にはものすごく感じる。でも高野連ってそういうところには注意しないんだよな。それで結局、かぶりが浅くて1球ごとに帽子が落ちては拾うピッチャーを見ていると『帽子の意味をなしていないんじゃないか』と思うよ」

 ―なるほど…。さて、運命のドラフトまであと1か月ですが、優勝した大阪桐蔭の根尾昂、藤原恭大、柿木蓮らは愛甲さんの目にどのように映りましたか。

 「やっぱり根尾、藤原の2人は抜けているなという印象があるね。根尾は打つ、投げる、走る、捕る―という野球をやる動きの中での全体的なバランスが、すごくいい。多分プロに入っても、デビューは早いんじゃないかな。キレや速さに慣れてくればね。U18でも木製バットでホームランを打っていた。プロでは投手じゃなくて、ショートか外野かな。足も速いしね」

 ―藤原も魅力的です。

 「藤原はどの球団でも欲しいんじゃないかな。将来的には3、4番のクリーンアップを打てる打者だよ。根尾は育てるとしたら、イチローのような長打力のある1番打者というイメージが強いね。柿木は慌てて使うより、2、3年ファームでじっくり育ててからでも遅くはないと思うよ」

 ―そんな高校日本代表のオールスター軍団も、U18では韓国と台湾に敗れ、3位に終わりました。

 「今ね、韓国や台湾は自国でたくさんお金を稼げるほど、プロ野球選手の年俸が高いわけじゃないんだ。ゴルフと一緒で、はじめから米国を目指している人が多い。だから野球の技術的なところでも、メジャー志向というか、メジャーで通用するためのものを取り入れようとしているんだね」

 ―常にMLBを意識していると。

 「日本の問題点はプロと高校の組織が別々で、一番伸び盛りの時にプロの持つ最高レベルの技術を教えられないところだよ。高校野球が教育の一環であるというのは分かるし、当然のことだと思う。でも、将来はプロ野球選手になるんだ、一芸を伸ばすんだという高校生はたくさんいる。彼らに高いレベルの技術やパフォーマンスを教えるのも、教育の一環じゃん。そういう点でも韓国や台湾と差が出ていると感じたよな」

 ―この夏は酷暑で、過密な大会日程や投手の登板過多が議論になりました。

 「俺は甲子園はあのまんまでいいと思っているんだけど、夏の地方大会を何も7月の3週間に詰め込む必要はないんじゃないかな。1週間に1試合のスケジュールで、6月から地方大会を始めてもいいと思う。神奈川だと1回戦から決勝まで、8試合を戦わないといけない。だから8週間とは言わないけど、6、7週間で試合ができるように試合が組めないものかな。それなら登板間隔も十分、空けられると思うんだ」

 ―甲子園切符を目前に、連投、連投で疲弊し、最後は炎上してしまう投手を過去、何度も見てきました。

 「沖縄は6月から週末を使ってやるわけでしょ。他の県でできないことはないよね。まあ俺は根本的にセンバツはいらないとも思っている。だってセンバツの優勝校と夏の優勝校じゃ、実力差が歴然としているしね。センバツに負けて泣く高校生はほとんどいない。みんな『夏があるから』って言うし。頂点を目指す大会は、一つだけあればいいと思うけどね」

 ◆愛甲 猛(あいこう・たけし)1962年8月15日、神奈川・逗子市生まれ。56歳。横浜高では1年夏からエースとして活躍し、78、80年の夏の甲子園に出場。80年夏の決勝では早実・荒木大輔(現日本ハム2軍監督)に投げ勝ち、全国制覇。80年ドラフト1位でロッテに入団。84年から打者転向。89年には打率3割をマークし、一塁手としてゴールデン・グラブ賞を獲得。96年に中日移籍後は代打の切り札として活躍。00年限りで現役引退。現在は野球評論家、俳優としても活動中。クラブチーム「東京メッツ」のコーチも務める。

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