【宮城】仙台育英が連覇…不祥事、監督退任で「特別な夏」で復活

スポーツ報知
2年連続の甲子園出場を決め、6回途中から登板した大栄(右から3人目)に抱きついて喜ぶ阿部主将(同2人目)ら仙台育英ナイン(カメラ・有吉 広紀)

◆第100回全国高校野球選手権記念宮城大会 ▽決勝 仙台育英7―0古川工(28日・楽天生命パーク)

 宮城の決勝では、仙台育英が古川工を7―0で下し、2年連続27度目の出場を決めた。昨年12月に当時の3年生部員らによる飲酒・喫煙が発覚。6か月間の対外試合禁止処分を受け、名将・佐々木順一朗監督(58)が退任するなど激震に見舞われたが、背番号20の主将・阿部大夢(ひろむ)捕手(3年)を中心にチームを立て直した。

 連覇を決めた瞬間、阿部主将の脳裏には、昨年末からの出来事が駆け巡った。「これまで支えてくれた人たちの顔が浮かんできた。順一朗先生(佐々木前監督)だったり、不祥事がきっかけで、いなくなってしまったスタッフ…。たくさんの人たちのお陰で、ここまで来られた」。背番号20の大黒柱は、マウンドでの歓喜に加わり、ナインと感情を爆発させた。

 強固な師弟関係が、勝利をたぐり寄せた。2点リードで迎えた6回無死満塁のピンチ。系列校の秀光中教校野球部を指揮していた須江航監督(35)は、バッテリーの交代を指示。中学時代の教え子でもある大栄陽斗(おおさかえ・あきと)と阿部を送り出した。指揮官は「何度も修羅場を乗り越えて、中学でも全国優勝した。2人に懸けた。何とかしてくれると思っていた」。

 2者続けて直球で見逃し三振を奪うと、最後はスライダーで一飛に打ち取った。古川工・間橋康生監督(47)は「あの場面はキャッチャーにやられた」と脱帽。捕手3人態勢を敷くチーム方針で、“抑え捕手”として3番手で起用された阿部は「ピンチで出る練習を積み重ねてきた。大栄がよく投げてくれた」。流れを引き寄せ、終盤で一気に突き放した。

 昨年12月に、現役部員らによる飲酒、喫煙が発覚。阿部主将を中心に毎日のようにミーティングを重ね、自分たちを見つめ直した。須江新監督就任後は、先月20日のメンバー発表までチーム全員が同じ練習メニューをこなし、100試合を超える紅白戦でチームの立て直しに努めた。6月の対外試合解禁後は、大阪桐蔭などと練習試合を重ね、急ピッチでチームを仕上げてきた。

 昨夏甲子園にも出場した阿部は「今年は特別な夏だと思ってやってきた。不祥事を起こしたことには、責任を持たないといけない。大変なことを起こしてしまったけど、それでも応援してくれる人がいる。全国の方々に『仙台育英が復活した』と示せるように頑張りたい」。感謝の気持ちを胸に、甲子園でも暴れ回る。(青柳 明)

 ◆仙台育英の不祥事 昨年12月、硬式野球部の2年生部員3人と引退した3年生の計6人が、同11月27日に仙台市内の飲食店で剣道部の3年生2人とともに飲酒、喫煙をしていたことが発覚。その後の校内調査で、他にも寮内で飲酒したケースなども判明し、佐々木順一朗監督(58)、郷古武部長(50)が引責辞任。12月19日には日本学生野球協会から6か月間の対外試合禁止処分を科された。1月1日付で系列の秀光中教校軟式野球部の須江航監督(35)が新監督に就任し、佐々木前監督は3月末で同校教諭も退職した。

 ◆須江 航(すえ・わたる)1983年4月9日、さいたま市生まれ。35歳。仙台育英では佐々木前監督の指導を受け、2年秋から学生コーチ。八戸大(現八戸学院大)では1、2年時はマネジャー、3、4年時は学生コーチ。高校では前巨人の矢貫、大学では楽天・青山がチームメート。2006年4月から秀光中教校軟式野球部監督。弱小チームを全国大会常連校に育て上げ、14年には全国中学校体育大会(全中)で初優勝を果たした。今年1月1日付で仙台育英の監督に就任した。

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