終戦記念日に敗退の興南が、語りつぐ未来

スポーツ報知

 ◆第100回全国高校野球選手権記念大会 第11日第2試合(15日・甲子園)▽2回戦 木更津総合7―0興南

 先人たちに誓った夏は、73回目を迎えた終戦記念の日に、終わった。興南(沖縄)は木更津総合(東千葉)との2回戦に臨み、0―7の完封負け。沖縄にとって特別な日に、勝利は飾れなかった。「自分たちの野球ができなかった。勝てなかったのが悔しいです」。仲村匠平主将(3年)は、唇をかんだ。

 静けさのなか、熱い思いがこみ上げた。4回無死一、二塁の攻撃中。正午を迎えた甲子園に、サイレンが響き渡った。プレーを中断し、戦没者追悼のための30秒間の黙とう。仲村は「高校野球は、夢と感動を与えるスポーツ。最後まで、全力でプレーします」と、心の中で誓った。

 指揮官の思いも、ナインに届いた。「過去があって、今がある。心の感動、心の文化を創るような高校野球にしていきたいなという節目の日」。選手時代、ちょうど50年前の50回記念大会で主将として同校を沖縄勢初の4強に導いた我喜屋優監督(68)は、この特別な一戦に思いを寄せていた。

 結果は、中盤まで互角の戦いを演じながら、終盤に崩れて完敗。8安打を放ちながらもあと1本が出ずに、10残塁。守備でも2失策がともに失点に絡んだ。それでも、10年に史上6校目の春夏連覇を達成している名将は「選手は最善を尽くしてくれた。最後まで諦めない野球はできました。50年も野球に触れさせてもらって、幸せです」とナインをねぎらった。

 野球を通じた思いは、次の世代に語りつがれていく。「次世代を担っていくのは自分たち。100回という特別な舞台で経験したこと、野球を通して学んだことを、後輩たちに伝えていきたい」と仲村主将。伝えて行くことが自分の役目、と決意を語るその目は、力強かった。73年前の悲惨さを伝える人は、減る一方だ。しかし、スポーツを楽しむことができる平和、そして100回を数えた高校野球を未来につないで行くのは、これからを生きる彼らだ。(大谷 翔太)

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