右手障害に負けない「山中主将を打席に」高知商結束あと一歩…

スポーツ報知
試合に敗れ、甲子園の砂を持ち帰る高知商・山中主将(左)

◆第100回全国高校野球選手権記念大会第12日 ▽3回戦 済美3―1高知商(16日・甲子園)

 今大会で高知商の3度目の校歌は響かなかった。2点を追う9回2死一、三塁で浜田麟太郎が左飛に倒れると、三塁コーチを務める山中大河主将(3年)は目を覆った。「自分たちの打つ野球ができなかった。最高の仲間と一緒に野球ができないと思うと、涙が…」。自慢の打線が8安打1得点と沈黙。32年ぶりの8強入りに手が届かなかった。

 山中は先天性四肢障害のため、生まれつき右手の指が2本しかない。それでも、ハンデに負けない屈強なハートと誠実な人柄が認められ、新チームの主将に選ばれた。常に前向きで最後まで諦めない。劣勢の展開にも、三塁コーチスボックスから身を乗り出して「とにかく楽しめ!」と声を張り上げた。

 2回戦までは計28安打で26得点。地元の祭りにちなみ「よさこい打線」として猛威をふるった。ナインには、打ちまくらなければいけない理由があった。昨秋からベンチ入りしている山中は、公式戦の出場機会がない。「主将を打席に立たせろ」を合言葉に、大量リードの展開を作ろうとした。

 結局、この日も出番はなかったが「最後までつないで自分に打席を回そうとしてくれた。ここまで連れてきてくれて感謝しかないです」。目標は教員になって野球指導をすること。「次は教える側で甲子園に行きたい」と新たな夢に突き進む。(牟禮 聡志)

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