近江・木村、殿馬スクイズ見事!次の100年もドラマを…金村義明氏独占手記

スポーツ報知
始球式を務めた金村義明氏

 甲子園のマウンドに上がるのは、西武時代の現役最終年(1999年)の阪神とのオープン戦以来だった。当時、西口、石井貴ら未経験の投手陣に高校時代を自慢したことを思い出す。甲子園は母校から15分の“近くて遠い聖地”。81年春の初出場では、初戦で負けて「甲子園の土なんかいらん」と泣いたのが懐かしい。

 始球式をさせてもらった近江・常葉大菊川戦。登板前に81年夏に優勝した時の“天にも昇るガッツポーズ”の映像が大型ビジョンに流された。あの時は、甲子園の魔物を味方につけて、6試合すべてで完投できた。そこで自然に出たガッツポーズは、優勝投手だけの特権だ。いろんな人から再現をリクエストされたけど、始球式でやるわけにはいかない。

 五十肩と痛風で最悪のコンディション。八ケ岳で愛犬アロンとボール遊びして肩をならしてきたが、右手がむくんで、ブルペンでは3球だけ。前日の板東英二さんは50球も投げ込んだらしい。

 鍛錬を積んでいないと大観衆の前で力んでしまうのは当然の結果。外角のワンバウンドになったが、近江の捕手・有馬諒君がよく捕ってくれた。8回には木村龍之介君が顔面付近に来た球をバットを縦にしてスクイズ。殿馬(漫画『ドカベン』の秘打キャラクター)かと思った。ベスト8を決めた近江はなかなか面白いチームだ。近江と新たな縁ができたのがうれしい。

 1日ずれていたなら母校・報徳学園の試合で始球式だったが、そこはゴジラ(5日に後輩の星稜ナインと始球式を務めた松井秀喜氏)と持ってるものが違うか。いろんな巡り合わせとすれ違いがあるのが甲子園。球児たちには、次の100年もドラマを見せ続けてほしい。(スポーツ報知評論家)

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